著者
尾崎 良智 井上 修平 藤野 昇三 紺谷 桂一 澤井 聡 鈴村 雄治 花岡 淳 藤田 美奈子 鹿島 祥隆 古川 幸穂
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.14, no.6, pp.726-730, 2000-09-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
14
被引用文献数
3 2

入院中に喀毛症 (trichoptysis) を認め, 左上葉気管支と交通のあった縦隔奇形腫の1手術例を経験した.症例は36歳, 女性.1995年6月の検診で左上肺野に異常陰影を指摘され, 血疾が出現したため当科に入院した.入院中に喀毛をきたし, 縦隔成熟型奇形腫の気道内穿破と診断された.同年7月に縦隔腫瘍摘出および左上区切除術を行った.切除標本で腫瘍は左B3気管支に穿破していた.縦隔成熟型奇形腫は比較的高頻度に隣接臓器, 特に肺・気管支への穿孔をきたすが, 画像診断が進歩した現在では, 喀毛症により診断される例は極めてまれである.穿孔する原因としては腫瘍内の膵, 腸管組織による自家消化作用が注目されているが, 本症例では, 膵, 腸管組織は認められず, 腫瘍内容物の増大に伴う嚢胞内圧の上昇と周囲組織との炎症性癒着が穿孔の主たる原因と考えられた.
著者
井上 修平 藤野 昇三 紺谷 桂一 澤井 聡 手塚 則明 花岡 淳 尾崎 良智 鹿島 祥隆 元石 充 古川 幸穂
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.57-64, 2002-01-15
被引用文献数
10 7

従来,胸膜中皮由来とされ限局性胸膜中皮腫(localized mesothelioma)と呼ばれた腫瘍は,近年,胸膜中皮下の間葉系細胞由来と考えられるようになり,solitary fibrous tumorまたはlocalized fibrous tumor of the pleuraという呼び名が一般化しつつある.胸腔鏡下に摘出し得た有茎性の3症例を報告する.3例中2例は臓側胸膜から発生し,1例は壁側胸膜から発生していた.本症は肺腫瘍,胸壁腫瘍,縦隔腫瘍等との鑑別が困難であるが,3例中2例は体位変換によって腫瘤陰影の移動が認められ,術前に有茎性腫瘍の診断が可能であった.3例各々の最大径は6.3cm,4.9cm,3.5cmであったが,全例胸腔鏡下摘出は容易であり,再発等認めていない.