著者
鹿川 修一 吉田 清英 寺岡 靖剛
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究は,ディーゼル排ガス中の炭素微粒子(パティキュレート;PM)と窒素酸化物(NOx)の有害成分を同時に除去,無害化する新しい排ガス浄化システムの開発を目指したものである.1.触媒とPMの混合物を反応ガス中で連続昇温しながら反応を追跡する昇温反応法を用いて,ペロブスカイト型酸化物(ABO_3),K_2NiF_4型酸化物(A_2BO_4),スピネル型酸化物(AB_2O_4)のPM-NOx同時除去活性を調べた.(1)PM-NOx同時除去活性は,ペロブスカイトおよびK_2NiF_4型酸化物のBサイト,スピネル型酸化物のA,Bサイトに入る遷移金属イオンの種類に大きく依存し,CoやMnを含むものは活性は高いがNOxのN_2への還元選択性が低く,CuやFeを含むものが適度な活性と高い選択性を示す.(2)アルカリ金属,特にKの添加により活性と選択性が同時に向上し,高性能なPM-NOx同時除去触媒を得るにはKの添加が必須である.(3)複合金属酸化物は遷移金属単独酸化物やそれらの機械的混合物および担持白金触媒よりもNOxの還元能が高く,PM-NOx同時除去反応に対して複合金属酸化物が有効である.2.反応の速度論的検討から,NOの酸化によるNO_2の生成,NO_2の解離吸着による原子状吸着酸素の生成,PM表面での原子状吸着酸素により活性化された中間体(C^*[O])の生成,気相酸素の関与によるC^*[O]中間体濃度の増加をキ-ステップとするPM-NOx同時除去反応機構を提案した.3.ぺロブスカイト型La_<0.9>K_<0.1>CoO_3をハニカムフィルターに担持し,実排ガスから直接PMを捕集した後に,SO_2,H_2Oを含む模擬ディーゼル排ガス中でのPM-NOx同時除去特性を測定した.PM/触媒混合物を用いた基礎研究と比較して,着火温度が約100°C高くなり,またNOx還元率も低下したが,比較的良好な同時除去特性を示し,本プロセスの実用化の可能性が強く示唆された.