- 著者
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若林 貞男
麻生 好正
中野 智紀
山本 留理子
竹林 晃三
犬飼 敏彦
- 出版者
- 一般社団法人 日本糖尿病学会
- 雑誌
- 糖尿病 (ISSN:0021437X)
- 巻号頁・発行日
- vol.49, no.1, pp.19-26, 2006 (Released:2008-07-24)
- 参考文献数
- 26
【目的】起立性低血圧(orthostatic hypotension; OH)を有する2型糖尿病患者において,24時間心拍変動パワースペクトル解析(PSA)を施行し,心自律神経機能との関連について検討した.【対象と方法】対象は91名の2型糖尿病患者とし,起立性低血圧の診断基準は,起立時に収縮期血圧が30mmHg以上の低下,あるいは20mmHg以上の低下,かつふらつき・めまいなどを有した場合とした.24時間ホルター心電図より得られた連続したR-R間隔を対象にPSAが施行された.高速フーリエ変換法により,low frequency(LF: 交感・副交感神経両方の活性),high frequency(HF: 副交感神経活性)が算出され,さらにLF/HF比を交感神経・副交感神経バランスの指標とした.【結果】OH群が14名,正常群(No OH群)が77名であった.OH群では,No OH群に比し,クレアチニン・クリアランス,正中神経伝導速度が有意に低下していた.LF/HF比は,24時間のいずれの時間帯においても,OH群はNo OH群に比し,有意に低下していた.一方,HF値については,いずれの時間帯において,両群間に有意な差を認めなかった.起立時の収縮期血圧低下度を目的変数とした多変量解析により,24時間平均LF/HF比がその独立寄与因子として明らかとなった.【結論】起立性低血圧患者では,心自律神経機能の中でも特に交感神経機能の低下が示唆された.また,糖尿病性自律神経障害の評価法として,24時間にわたるLF/HFの解析が有用であると考えられた.