著者
飯嶋 寿江 加瀬 正人 相良 匡昭 加藤 嘉奈子 清水 昌紀 西田 舞 友常 孝則 田中 精一 青木 千枝 城島 輝雄 鈴木 國弘 黒田 久元 麻生 好正
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.707-714, 2015-09-30 (Released:2015-09-30)
参考文献数
30
被引用文献数
1

症例は70歳,女性.1型糖尿病,うつ病にて加療中,自殺企図のためインスリンデグルデク300単位,インスリンリスプロ300単位を皮下注射し,注射3時間後に意識障害で家族に発見され,当院救急外来に搬送となり,入院となる.簡易血糖測定では,測定感度以下(30 mg/dl未満)を示し,血清インスリン値は2972.1 μU/mlと極めて高値を示した.直ちに,ブドウ糖の静脈投与を開始した.低血糖は大量注射30時間後を最後に認めなかったものの,大量投与36時間後の血清インスリン値は1327.0 μU/mlと依然として高く,低血糖の予防のため,第6病日まで経静脈的ブドウ糖投与を継続した.本症例の経過より,インスリンデグルデクの大量投与症例では他のインスリン製剤以上に長時間にわたる注意深い観察と対応が必要であると思われた.インスリンデグルデク大量投与による遷延性低血糖の症例は極めて稀であり,文献的考察を加え報告する.
著者
今里 雅之 林 恒男 田中 精一 上田 哲哉 竹田 秀一 山本 清孝 武藤 康悦 磯部 義憲 上野 恵子 山本 雅一 小林 誠一郎 羽生 富士夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.80-84, 1990-01-01
被引用文献数
5

症例は50歳男性で,主訴は心窩部痛である.胃潰瘍の診断とともに,超音波検査で肝右葉に蜂巣状内部構造を有する比較的境界鮮明な直径7cmの腫瘤を認めた.Computed tomography(CT)では腫瘤は低吸収域で造影後には菊花状で各花弁にあたる部位の辺縁が濃染される特異な像を呈した.腹部血管造影では,腫瘍血管や圧排所見はないが毛細管相で腫瘍濃染像を認めた.腫瘍マーカーは正常であった.腫瘍の穿刺吸収細胞診では,白色の濃汁の中に線維性組織が吸引されたが炎症性変化のみで悪性所見は認めないため厳重な経過観察とした.2年後,画像的に腫瘤の増大が認められ,悪性腫瘍が否定できないために拡大肝右葉切除術を施行した.病理学的にinflammatory pseudotumorと診断された.肝原発の本疾患は文献上17例の報告しかなく,経過を追い増大を認めた症例はいまだ報告されていない.ここに文献的考察を加え報告する.
著者
小池 伸定 鈴木 修司 今里 雅之 田中 精一 林 恒男 鈴木 衛 羽生 富士夫 山本 雅一
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.512-516, 2002-05-01
被引用文献数
8

症例は56歳の男性.1991年肝細胞癌の診断で7月肝外側切除術を施行.切除標本は4×3cmの単結節型で,病理組織学的所見は硬化型肝細胞癌,EdI+II,IV,fc(-),sf(-),vp0,vv0,b1,tw(-),im1,z1であった.1996年より外来経過観察中,血清AFPの上昇を認め,2000年4月腹部CT検査で左胃動脈幹に約5cmのリンパ節腫大あり,血管造影で左胃動脈より腫瘍濃染像を認め,残肝再発なく,肝細胞癌の腹腔内リンパ節転移の診断で,2000年7月リンパ節摘出術を施行した.硬化型細胞癌で肝切除後9年を経過して,残肝再発なく孤立性にリンパ節再発をきたし,これを切除しえた1例を経験した.
著者
鈴木 修司 天野 久仁彦 原田 信比古 田中 精一 林 恒男 鈴木 衛 羽生 富士夫 平野 宏
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.416-421, 2004-04-01
被引用文献数
5

先天性胆道拡張症分流術後26年を経過して発症した肝内胆管癌の1例を経験したので報告する.症例は46歳の男性で,1975年先天性胆道拡張症戸谷分類IVaにて肝管空腸Roux-Y吻合を施行された.2001年3月心窩部痛,背部痛にて近医受診し,肝腫瘤と肝門の胆管狭小を認め当院紹介入院となった.CTでS4に30mm大の腫瘤と肝十二指腸間膜周囲リンパ節腫大を認めた.ERCPで膵胆管合流異常,遺残膵内胆管内に多数の結石を認めた.閉塞性黄疸の進行でPTCD施行し,胆管造影で尾状葉,右前区域,後区域胆管根部に不整な狭窄を認めた.血管造影で左肝動脈,門脈左枝の狭窄を認めた.以上より肝内胆管癌で左肝管から尾状葉,右前区域,後区域胆管根部および左肝動脈,左門脈へ浸潤と診断した.拡大左葉尾状葉切除で切除可能と判断し開腹したが,肝転移,肝十二指腸間膜へ浸潤高度で切除不能のため胃空腸吻合術とした.術後肝不全の進行で約1か月後死亡した.