著者
後藤 正司 岡本 卓 亀山 耕太郎 林 栄一 山本 恭通 黄 政龍 横見瀬 裕保
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.146-150, 2003-03-15
被引用文献数
6 2

18年の長期経過をたどった気管支内異物による反応性肉芽腫の一例を経験した.症例は25歳男性.健康診断の胸部X線写真で,右下肺野の帯状影を指摘された.気管支鏡検査で右B^<9+10>を閉塞する腫瘤を認めた.生検で肉芽腫と診断.腫瘤の末梢側の観察が不可能で悪性疾患の合併も否定出来ず,開胸術で腫瘤を摘出した.腫瘤は有茎性ポリープ様で炎症性肉芽腫と診断した.術後8日目の胸部X線写真で術前と同様の無気肺が出現,気管支鏡検査でも術前と同様に腫瘤を認めた.生検鉗子で肉芽腫を可及的に摘出すると,開存したB^<10b>に3.0×2.0cm大のビニール片を認めこれを摘出した.以後,肉芽腫の再発は認めていない.仔細に問診すると,7歳時のパン食い競争後に強い咳嗽,胸痛を自覚していた.今回の気管支内異物は,この際誤嚥したビニール片と考えられこの異物による物理的刺激が反応性肉芽腫の成因と推察された.
著者
小林 萌 熊谷 陽介 平山 安見子 尾田 博美 長 博之 黄 政龍
出版者
一般社団法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.635-639, 2023-11-15 (Released:2023-11-15)
参考文献数
15

縦隔に発生する血管腫は比較的稀であり,全縦隔腫瘍の0.5%以下とされ,術前診断は困難である.症例は61歳女性.健診で心電図異常を指摘され当院循環器内科を受診した.冠動脈CTで前縦隔に腫瘤影を指摘され,当科を受診した.CTで造影効果があるため胸腺腫を疑い,診断および治療目的に手術を行った.左胸腔よりアプローチし,暗赤色で弾性軟の腫瘤を認め,胸腺左葉の一部と共に摘出した.病理組織検査で海綿状血管腫と診断した.縦隔腫瘍の診断においては,血管腫の存在も念頭に置く必要がある.
著者
後藤 正司 張 性洙 石川 真也 黄 政龍 横見瀬 裕保
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.98-101, 2007
参考文献数
7

背景.高齢者やperformance status(PS)不良の肺癌は治療法の選択が難しい.今回,Cisplatin(CDDP)とDocetaxel(DTX)による気管支動脈内抗癌剤注入療法(bronchial arterial infusion, BAI)が著効した,高齢でPS不良の肺扁平上皮癌の症例を経験したので報告する.症例.80歳の男性が,咳嗽,全身倦怠感,食欲低下を訴え受診した.胸部CTでは右肺門に塊状陰影が認められ,気管支鏡検査では右主気管支に腫瘍が認められた.生検で扁平上皮癌と診断されたが,高齢でPSが不良(PS4),呼吸不全も伴っており,CDDP(60mg)とDTX(40mg)によるBAIを施行した.治療により腫瘍は完全に消失し,呼吸状態及びPSも改善し(PS1),BAI後放射線治療の施行が可能となった.結論.CDDP及びDTXによるBAIは,PS不良の肺癌に対して有用な治療の一つと思われた.
著者
後藤 正司 岡本 卓 中野 淳 中島 尊 桝屋 大輝 劉 大革 亀山 耕太郎 石川 真也 山本 恭通 黄 政龍 横見瀬 裕保
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.132-135, 2004-03-15
被引用文献数
4 3

左側は66歳,女性.64歳時に右乳癌にて右胸筋温存乳房切除術を受けた.病理病期はstage II で,術後DMpC療法(5'-DFUR : 800mg,MPA : 800mg,CPA : 100mg)を施行中であった.2003年1月16日,胸部CTで左S^8にspicula, notchを伴う小結節陰影の出現を認めた.結節陰影の増大を認め,またFDG-PETで,左S^8の結節陰影に一致して集積を認め,精査目的で,2003年3月24日当科へ入院した.CT下肺生検では確定診断に至らず,2003年4月23日,胸腔鏡補助下肺生検を施行し肺クリプトコッカス症と診断された.腫瘤陰影を呈する肺クリプトコッカス症のCT所見は肺癌と類似し,PETでも陽性を示すことがあるため画像上の鑑別は困難である.