著者
黒坂 真
出版者
大阪経大学会
雑誌
大阪経大論集 = Journal of Osaka University of Economics (ISSN:04747909)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.27-41, 2014-09

金日成はかつてスターリンとソ連,中国を礼賛していた。金日成の著作ではその後この部分が削除,修正されていった。本論はこの史実と金正日の「社会政治的生命体論」「革命的首領観」の関係およびその資源配分上の意味を考察する。金日成のチョサクの記述修正は金正日による何らかの決済を経てなされたと考えられる。映画や音楽に造詣のあった金正日は,金日成を首領とする「社会政治的生命体」の一員として首領と一体化しているという陶酔感に人々を浸らせることが独裁体制を強固にするために重要であると考えていた。金正日は「革命的首領観の確立」により,崇拝労働の効率を向上させようとした。モデル分析により崇拝労働結晶物の効率が向上すると,財の生産労働を減らし,崇拝労働を増やす場合があることがわかった。財の生産が減少すると,独裁体制を支える層の消費が減少し独裁体制の存続が困難になりうる。金正日による「贈り物政治」が困難になる。
著者
黒坂 真
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.35-40,59, 2005-01-31 (Released:2009-12-03)
参考文献数
4

北朝鮮では,金父子に対する崇拝が強化されてきた。本稿は北朝鮮の体制について二種類のモデルを提起する。第一は労働党幹部が,一般国民の労働配分を直接決定できる場合である。第二は労働党幹部が,一般国民の誘因制約と参加制約を考慮して,一般国民と契約をする場合である。分析により,脱北したときに得られる所得が低いと一般国民がみなしてきたことが,金父子に対する崇拝強化の重要な原因であることがわかる。
著者
黒坂 真
雑誌
大阪経大論集 (ISSN:04747909)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.139-147, 2013-11-15

本論の目的は、社会主義独裁体制による世界革命路線を、資源配分上の効率性という側面から考察することである。分析により、独裁者が指導する海外革命工作組織による工作活動の生産性が上昇すると、独裁者が自国内で自らへの個人崇拝を強化する場合がありうることがわかった。海外革命工作組織に参加する人が多くなると、独裁者は自国内で自らへの個人崇拝を強化することもわかった。旧ソ連や毛沢東期の中国、北朝鮮における個人崇拝の強化は、海外革命工作組織による工作活動の生産性上昇または組織強化がもたらした経済主体の合理的行動の結果と解釈できる。