著者
黒岩 厚
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

Hoxa11とHoxa13は、それぞれ軛脚と自脚の固有な骨形態形成を制御する最上位遺伝子である。転写因子として機能するこれらHoxの標的遺伝子を、ChIP-Seqとマイクロアレイを組み合わせて網羅的に同定した。その結果、Hoxa11とHoxa13に共通する軟骨分化の制御に関わる標的遺伝子が同定された。これらの標的遺伝子は、四肢骨形成に関わる他のホメオドメイン転写因子の標的でもあることが判明し、四肢骨形態形成の転写調節ネットワークの実態が明らかになった。またHoxa13は、これらに加えて肢芽間充織の増殖に関わる遺伝子の発現制御を通じて四肢類の自脚に共通した形態形成を制御することが明らかになった。
著者
黒岩 厚
出版者
名古屋大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

1.予定肢芽領域におけるFgf10発現開始過程でのHox遺伝子の関与を、ニワトリ胚への電気穿孔法による遺伝子導入を用いて解析した。R212abエンハンサーに対してHoxb-6はWnt依存性の転写促進活性を示し、Hoxa-9は逆に抑制作用を示した。Hox6発現領域においてR2依存性Fgf10発現惹起され、後方にあるHoxa-9発現領域で抑制されるため、予定肢芽領域のみでFgf10発現が拘束され肢芽が形成されることが明らかとなった。肢芽の位置指定過程でHoxがFgf10発現制御を介して重要な役割を果たすことが初めて示された。2.軟骨魚類、肉鰭魚類のシーラカンスや羊膜類にはFgf10遺伝子中にR3が存在するが、鰭にわずかの骨要素しか持たない真骨条鰭魚類のFgf10には存在しない。条鰭魚類の中でも鰭に比較的大きな骨要素を持つ分岐鰭亜綱のポリプテルスのゲノム中にR3配列があり、これがFgf10遺伝子中に軟骨魚類や羊膜類同様の位置に存在した。これらから肢芽間充織エンハンサーR3の存在が鰭原基間充織の成長期間と大きく関連することが示唆され、この仮説の実験的検証の必要性が示された。3.染色体上のエンハンサーの機能を探るために、R2の387bp(ΔR212L2)、R3の531bp(ΔR31C2)を欠失したマウスを作成した。これらについてFgf10KOとのトランスへテロ胚におけるFgf10発現に与える影響を解析した。Fgf10KO/Δ212L2胚では耳胞発現は変化しないが、肢芽前方間充織の発現が特異的に低下し、肢芽が一過的に低形成となった。これからR212L2は肢芽初期エンハンサーとして機能することが示された。Fgf10KO/Δ31C2胚では肢芽間充織発現が特異的に低下していたことから、R31C2は肢芽間充織エンハンサーとして機能し、他にも類似の機能を担う配列が存在することが明らかになった。