著者
黒川 彰夫 木附 公介 黒川 幸夫
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.1113-1120, 1995 (Released:2009-06-05)
参考文献数
19
被引用文献数
10 8

現在,痔瘻の治療は外科的療法が原則であり,肛門機能保全を重視した括約筋温存術式が主流であるが,lay open法に比し再発率がやや高いという問題がある.一方,痔瘻の古典的治療法もさまざまな改良が加えられ,中国の明時代に薬線療法や枯痔釘(散)療法が痔瘻根治術として完成した.これらはlay open法やcoring out法と原理は同じで,薬線療法のうち結紮法は,今もseton法やKshara Sutra法として残っている.従来,筆者らはこれらの古典的治療法を外来で実施,根治性と機能温存に対して良好な成績を収めてきた.最近の痔瘻の外来手術819例のうち古典的治療法を実施したものは253例で,seton法(薬線,枯痔釘の併用例を含む)182例(72.0%),薬線療法(Kshara Sutraを含む)57例(22.5%),枯痔釘療法14例(5.5%)であった.平均治癒日数は42.7日,治癒遷延例は3例(1.2%),再発例は4例(1.6%)であり,肛門の変形や機能不全の訴えは3例(1.2%)であった。
著者
黒川 彰夫 木附 公介 黒川 幸夫 増田 芳夫 畑 嘉也
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.1051-1056, 1999-10-01
被引用文献数
2

最近の医療情勢の変化から, day surgeryに対応できる手術が俄かに注目され, 術者の手技の熟達度とは関係なく, 頻繁に実施されるようになってきた.day surgeryの増加に伴って, 患者側からの不満も増えている.したがって, このような状況が肛門病学の本質に適った変化であるか否かを真剣に検討する必要があると考える.筆者らは長年, 外来手術だけで肛門疾患に対処してきたが, 主として古典的な非観血療法を実施してきた.技術的には, この特殊性がday surgeryを可能にさせてきたのかもしれないが, 最も大切にしていることは患者と担当医が相互に直接連絡できる体勢をとっていることである.患者らが安心して自宅で入院と同じ状態で治療できるシステムの形成が最重要と考えている.<BR>今後, 本気でday surgeryを実行しようとする術者は, 術後の一定期間は24時間拘束される覚悟がなければ, 安易に実践するべきではないと警鐘を鳴らしたい.