著者
佐々木 みのり 佐々木 巖 増田 芳夫
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.303-311, 2005 (Released:2009-06-05)
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

肛門〓痒症は皮膚科学的には次のように定義される.「肛囲に皮疹がなく〓痒感があるもの. ただし, 掻破により二次的な続発疹をみる, 明らかな原疾患が存在するものはこれに含まれない」.肛門〓痒症は引き金となる〓痒感に対し患者自身が掻破することによって〓痒感の悪化と続発疹の発生をみるので, 〓痒を強力に抑えるステロイド外用治療と掻破を防ぐ生活指導の併用が適切な治療方針と考えられた. ステロイド外用剤はリバウンドと長期連用による副作用が問題になるが, 我々は使用するステロイドの量を3週間にわたって漸減する方法を試みたところ副作用を効果的に避けることが可能であった. 2003年1月から12月までの1年間に肛門〓痒症の診断で治療した追跡可能な94例中全例 (100%) で症状の改善を確認, 17例で再発を認めたが同様の治療で軽快した. 副作用は認めなかった. 本法は肛門〓痒症の有効な治療法であると考えられた.
著者
佐々木 みのり 佐々木 巌 増田 芳夫
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.38-42, 2007 (Released:2008-10-31)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

bowenoid papulosis (以下BPと略す) は尖圭コンジローマと臨床所見が酷似するハイリスクHPV関連のSTDである. 本疾患は, 病理所見はBowen病に類似するが, 臨床経過は良性で自然消退の報告も多い. しかし同時に悪性化や子宮頸癌合併の報告もあり注意深い経過観察が必要な疾患でもある. 今回我々はBPの一例を経験したので報告する.症例は34歳女性. 2002年8月に肛門性交の機会があり, 同年秋頃より肛門周囲に丘疹が出現. 皮疹の増加と拡大を認め2003年1月当院受診した. 肛門周囲に尖圭コンジローマと, その中に混在する黒褐色の扁平な丘疹を認めた. BPを疑い混在する尖圭コンジローマと同時に切除焼灼した. 皮疹の組織像ではボーエン病類似の像を呈しBPと診断した. その後BPと思われる皮疹の再発を二度繰り返したが, その都度切除焼灼を行い2003年6月を最後に再発を認めていない.
著者
黒川 彰夫 木附 公介 黒川 幸夫 増田 芳夫 畑 嘉也
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.1051-1056, 1999-10-01
被引用文献数
2

最近の医療情勢の変化から, day surgeryに対応できる手術が俄かに注目され, 術者の手技の熟達度とは関係なく, 頻繁に実施されるようになってきた.day surgeryの増加に伴って, 患者側からの不満も増えている.したがって, このような状況が肛門病学の本質に適った変化であるか否かを真剣に検討する必要があると考える.筆者らは長年, 外来手術だけで肛門疾患に対処してきたが, 主として古典的な非観血療法を実施してきた.技術的には, この特殊性がday surgeryを可能にさせてきたのかもしれないが, 最も大切にしていることは患者と担当医が相互に直接連絡できる体勢をとっていることである.患者らが安心して自宅で入院と同じ状態で治療できるシステムの形成が最重要と考えている.<BR>今後, 本気でday surgeryを実行しようとする術者は, 術後の一定期間は24時間拘束される覚悟がなければ, 安易に実践するべきではないと警鐘を鳴らしたい.