著者
黒川 秀子
出版者
日本経営学会
雑誌
經營學論集 第88集 公共性と効率性のマネジメント─これからの経営学─ (ISSN:24322237)
巻号頁・発行日
pp.F27-1-F27-7, 2018 (Released:2019-06-17)

CSRについては1990年代から活発な議論が展開され,2000年代以降,理論面,実務面ともさらに進化,深化し続けている。第91回日本経営学会大会のキーワードは統一論題とサブテーマに示されている通り,公共性と効率性であり,CSRはまさに現代企業の持つ公共性と効率性の二面性を照射する。ところで,「企業の社会的責任」という問題は,1960年代から70年代にも大きく取り上げられ,そのブームはしばらく続いたとされる。 本稿では,1970年代の「企業の社会的責任」論の展開と2000年代以降の「CSR」論の展開を比較し,CSRに対する意識の変遷を辿るとともに,CSRの本質を探ろうとした。 谷本,宮坂の論考から,前者は「経営者の社会的責任」が,後者はビジネスエシックスとステイクホルダーセオリーを契機として「企業自体の社会的責任」が問われ,そのことが前者がブームで終わった理由であり,前者と後者の相違点であることが理解された。 また,現在のCSRを取り巻く問題点として,制度と実態の乖離,各種機関,機関投資家,アドバイザーの存在とCSRの宣伝広告性,「CSR=社会的責任」における「責任」の理解,の3点が考えられた。