著者
黒沼 有里 下村 道子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.169-175, 2019-06-05 (Released:2019-06-21)
参考文献数
12

はんぺんは多くの泡を含んだ独特のテクスチャーを持つ日本の伝統的な水産食品である。起泡材としての卵白や山芋のほかに近年は増粘多糖類(主成分はグアルガム)が使われることが多い。そこで,卵白,山芋,増粘多糖類がはんぺんの食味,硬さなどにどう影響しているのか,味覚検査,物性測定,光学顕微鏡観察を行って調べた。はんぺんの製造にはサメの鮮肉を用い,一般的なはんぺん製造の材料から卵白,山芋あるいは増粘多糖類を除いたオミッションテストを行ってその作用を検討した。従来のはんぺんでは,製造材料から卵白または山芋を除くと,はんぺんの硬さの値が高くなり,比重は大きくなり,食味は好まれなかった。増粘多糖類添加はんぺんは,増粘多糖類無添加はんぺんより硬さの値が低く,比重が小さく,また内部に丸みを帯びた多くの泡が観察された。増粘多糖類の添加は山芋の作用を補い,起泡性,気泡保持に効果があると推察された。