著者
秋山 久尚 黒澤 利郎 相馬 一亥 大和田 隆
出版者
北里大学
雑誌
北里医学 (ISSN:03855449)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.279-283, 1995-06-30

われわれは,急性興奮覚醒薬(メタンフェタミン)中毒が来院時心肺停止(CPA)の原因と考えられた1症例を経験したので若干の考察を加えて報告する。症例は,39歳男性。平成3年6月9日,心肺停止で北里大学病院救命救急センターに搬送された。心肺蘇生術後,著明な高血圧と発汗が持続し,眼瞼および体幹の痙攣,40℃を越える高熱も認められた。蘇生後の胸部レントゲンは心拡大,両側肺うっ血以外に異常は認めなかった。頭部CTは異常を認めなかったが,脳波は平坦であった。また,心電図,心エコー図からは高血圧心が示唆された。一般検査では原因不明であったが,著しい交感神経刺激症状から薬物中毒を疑い,各種薬物の検索を行った。光学異性体カラム法にて,血中に9.17μmol/100 mlと致死量のメタンフェタミンが検出され急性覚醒剤中毒と診断した。今後,一般検索で原因不明のCPA症例では覚醒剤などの特殊な薬物中毒についても血中の濃度測定が重要であると考えられた。