著者
大和田 隆夫 飯野 久栄 石間 紀男 吉川 誠次
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.147-152, 1978-03-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
7
被引用文献数
5 5

温州ミカン果汁の主要成分である糖と酸の含量と嗜好との関係を明らかにするため,官能検査を行ない,次のような結果を得た。(1) 消費者に受け入れられる範囲は糖酸比からみると最低は12.5であった。より正確には,適正糖酸比は酸度によって変化し,糖酸比だけでは果汁の嗜好性を説明しきれなかった。(2) 最高嗜好度は糖と酸の相互作用によって変り,両者の関係式6X+8≧Y≧6X+6を満たす糖度(Y)と酸含量(X)のとき最高値が得られた。(3) 100%果汁の大部分は,これらの範囲外に分布するものと推定され,果汁の酸度に応じて糖を加えることにより,より消費者の嗜好に適したものにすることができることを認めた。(4) 天然ジュースに対して砂糖を加えることにより,消費者の嗜好性を高めることができるのは,甘味を適当な強さに上げると同時に,砂糖により酸味をやわらげる効果のあるためであることが明らかになった。(5) 消費者のジュースに対する反応は,酸味の強いものに対しては厳しく,甘味の強いものに対しては寛大であることが明らかであった。
著者
盛 虹明 増田 卓 北原 孝雄 相馬 一亥 大和田 隆
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.17-22, 1993-02-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
28
被引用文献数
2

肺水腫を伴うクモ膜下出血患者の肺水腫液と血清の膠質浸透圧を測定し,神経原性肺水腫の成因としての肺血管透過性亢進の関与を検討した。発症24時間以内のクモ膜下出血のうち,呼吸管理を必要とした肺水腫8例を対象とし,肺水腫を有しない33症例を非肺水腫群として比較した。肺水腫群はWFNS分類でgrade Vが75%, Fisher分類では全例group 3と4であった。来院時に血圧,脈拍,意識状態,胸部レントゲン写真,動脈血液ガス分析,血漿カテコールアミン濃度を測定した。さらに肺水腫例では,肺水腫液と血清の膠質浸透圧を測定した。来院時肺水腫群では非肺水腫群に比べ収縮期血圧の低下と心拍数の増加を認めた。肺水腫群の心胸郭比は平均48±4%と心拡大は認められなかった。動脈血液ガス所見では,PaO2が非肺水腫群78±16mmHgであるのに対し肺水腫群47±12mmHgと,肺水腫群で著しい低酸素血症を呈していた。血漿ノルアドレナリン,アドレナリン濃度は,肺水腫群でそれぞれ1,800±1,300pg/ml, 1,400±630pg/ml,非肺水腫群740±690pg/ml, 340±400pg/mlであり,非肺水腫群に比べ肺水腫群で有意に高値を示した。肺水腫液の膠質浸透圧は12.4から25.0,平均16.7±4.1mmHgと肺水腫群の全例で高値を示し,血清に対する肺水腫液の膠質浸透圧比は平均0.94と血管透過性亢進を示唆する結果であった。以上により,クモ膜下出血に伴う肺水腫の発生機序のひとつとして肺血管の透過性亢進が示された。
著者
上條 吉人 増田 卓 堤 邦彦 西川 隆 相馬 一亥 大和田 隆
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.7, pp.297-305, 1997-07-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
27

常用量のベンゾジアゼピン系薬剤によって,血中濃度が中毒域となった68歳から72歳の高齢者の3症例を経験した。各症例のベンゾジアゼピン系薬剤の体内薬物動態を分析し,高齢者の薬物動態の特徴と投薬上の問題点について検討した。症例1と症例3は食物誤飲による窒息で搬送され,症例2はうっ血性心不全の治療中に意識障害を生じて入院となった。ベンゾジアゼピン系薬剤として,症例1はロフラゼプ酸エチル(Lof) 2mg錠を1日1回とエチゾラム0.5mg錠を発症前に1回のみ服用,症例2はLof 2mg錠を1日1回,症例3はLof 1mg錠を1日3回服用していた。3症例のベンゾジアゼピン系薬剤の血中濃度は,ガスクロマトグラフィおよびベンゾジアゼピンレセプターアッセイを用いて経時的に測定した。来院時のLofの血中濃度は,症例1は256ng/ml,症例2は363ng/ml,症例3は425ng/ml,血清ベンゾジアゼピン受容体結合活性はジアゼパム当量で,症例1は1,800ng/ml,症例2は1,400ng/ml,症例3は2,200ng/mlであり,いずれも血中濃度は中毒域であった。Lofの消失半減期(T1/2)は,症例1は124時間,症例2は212時間,症例3は121時間であり,症例2においてT1/2の著明な延長を認めた。3症例はいずれも高齢者で,青壮年と比較して肝腎機能の低下から薬物クリアランス(CL)が低下し,症例2では心不全のためCLがより低下していたことが考えられる。さらに,脂肪組織の減量による分布容積(Vd)の減少も加わって,ベンゾジアゼピン系薬剤の血中濃度が上昇したものと思われた。また,多剤の服用は遊離型ベンゾジアゼピン系薬剤の濃度を上昇させるため,中毒症状が出現しやすかったものと考えられる。以上から,高齢者へのベンゾジアゼピン系薬剤の投与に際し,肝腎機能,血清蛋白濃度,体重変動,併用薬剤に注意して,ベンゾジアゼピン中毒を未然に防ぐ必要がある。
著者
大和田 隆夫 飯野 久栄 石間 紀男
出版者
農林省食品総合研究所
雑誌
食品総合研究所研究報告 (ISSN:03019780)
巻号頁・発行日
no.40, pp.p64-70, 1982-03

西瓜とメロンの糖および酸含量を測定し,同時に官能検査を行ない次のような結果を得た。1. 西瓜の酸は極めて少ないので,食味への寄与度は無視しうるとみなされ,従って糖によってのみ食味的品質が影響される。Bxより0.5を差し引くことによって,糖度の高い全糖の推定値が得られ,Bxが総合品質の指標となりうるとみなされた。総合的品質として合格するのはBx9.0以上のときであった。2. メロンは西瓜と同様に,酸が極めて少ないので,食味への与寄度は無視しうる。従って,全糖即ち,Bxによって食味的品質の指標となりうる。Bxより全糖を推定するための差し引き値は品種によって異なる。その差引値はプリンスメロンの場合,2.5,ルナ,アスコットメロンの場合は1.0であった。総合的品質として合格するのはBx10以上のときであった。
著者
常盤 嘉一 倉田 彰 宮坂 佳男 橘 滋国 矢田 賢三 大和田 隆 菅 信一 向野 和雄 高木 宏
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.128-132, 1993
被引用文献数
2

視野障害をきたす特徴的な水頭症の所見を得るために,後頭蓋窩腫瘍にて閉塞性水頭症をきたした28例の画像を検討した.視野障害群(n=6)と視野正常群(n=22)で,計測を含めたCTの検討を行った.第3脳室幅の著明な拡張と,同脳室の著明な下方進展が視野障害をきたす特徴的な所見であった.すなわち,両群間で,側脳室の拡大の程度に有意差はなかった.視野障害群では第3脳室幅(平均12 mm)が有意に嵩値を示した.また第3脳室の著明な下万伸展(トルコ鞍内への陥入)例が視野障害群(4/6例)で有意に多かった. MRIは2例中1例で視交叉と第3脳室および内頚動脈との関係を明瞭に描出した.今後,視野障害の責任病変の把握に有用となることが期待された.
著者
片岡 祐一 相馬 一亥 大和田 隆
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.329-336, 1995-08-10
被引用文献数
1 1

近年,増加傾向にある気管支喘息発作による発作死患者の病態を知る目的で,気管支喘息により来院時心肺停止状態であった患者26人(心肺停止群)を,重症気管支喘息のため人工呼吸管理を必要とした患者25人(対照群)と比較し,背景因子や臨床経過,病態生理などの差異について検討した。両群間で性比,年齢,通院治療歴,大発作入院歴,24時間以内の緩解発作の既往などの背景因子に差は認められなかった。来院までの経過は,心肺停止群では通報時12人(46.2%)が意識清明であったにもかかわらず,救急隊現場到着時20人(76.9%)の患者が心肺停止状態となっていた。一方対照群では,来院時22人(88.0%)に意識障害を認めたが,全例血圧は維持されていた。気管内挿管時の動脈血ガス所見では,心肺停止群は高度の混合性アシドーシスであったのに対し,対照群は呼吸性アシドーシスのみであった。症状出現から人工呼吸開始までの時間および治療開始後,気管内挿管時のPaCO<sub>2</sub>が半減するまでの時間は,心肺停止群でそれぞれ106±31min, 132±34minで,対照群の322±62min, 591±173minに比べ,ともに有意に短時間であった(p<0.01)。また症状出現から人工呼吸開始までの時間の分布も,心肺停止群は1時間以内が17人(65.4%)を占めていたが,対照群は1時間以上が17人(68.0%)占めていた。以上より心肺停止群は症状出現後急速に増悪し,きわめて短時間のうちに心肺停止に陥っているが,治療開始後の換気の改善もきわめて速い。心肺停止となる気管支喘息発作は,病態生理学的に発症機序が異なることが考えられ,わが国において急速に心肺停止に至る気管支喘息発作患者を減少させるためには,発症機序の解明とともに病院に来院するまでの対策が重要と考えられる。
著者
浅利 靖 島津 盛一 西村 博行 新井 伸康 中 英男 大和田 隆 比企 能樹 柿田 章
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.24, no.9, pp.2461-2465, 1991-09-01
被引用文献数
9

中年の男性に発生した巨大な膵のsolid and cystic tumor(SCT)を経験し,その臨床経過よりdoubling timeを算出した.また本邦報告例139例について検討した.症例は58歳男性.腹部腫瘤を主訴に入院.開腹したところ,膵体部に被膜におおわれ充実性かつ弾性軟の,24×19×8cmの腫瘤が存在し,膵体尾部脾合併切除施行.病理組織学的に,充実性で髄様増殖パターンを呈し,免疫染色では上皮系マーカーに陽性でありSCTの診断を得た.4年前の初診時の腫瘍径と今回術前の精査時の腫瘍径とからdoubling timeを算出したところ,240日とslow growingな腫瘍に分類されることを証明しえた.本邦報告例139例について検討したところ,本例は男性例としては最年長かつ最大の腫瘍径を持つものであった.術後1年経過した現在,患者は健在であり,再発も認められていない.
著者
秋山 久尚 黒澤 利郎 相馬 一亥 大和田 隆
出版者
北里大学
雑誌
北里医学 (ISSN:03855449)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.279-283, 1995-06-30

われわれは,急性興奮覚醒薬(メタンフェタミン)中毒が来院時心肺停止(CPA)の原因と考えられた1症例を経験したので若干の考察を加えて報告する。症例は,39歳男性。平成3年6月9日,心肺停止で北里大学病院救命救急センターに搬送された。心肺蘇生術後,著明な高血圧と発汗が持続し,眼瞼および体幹の痙攣,40℃を越える高熱も認められた。蘇生後の胸部レントゲンは心拡大,両側肺うっ血以外に異常は認めなかった。頭部CTは異常を認めなかったが,脳波は平坦であった。また,心電図,心エコー図からは高血圧心が示唆された。一般検査では原因不明であったが,著しい交感神経刺激症状から薬物中毒を疑い,各種薬物の検索を行った。光学異性体カラム法にて,血中に9.17μmol/100 mlと致死量のメタンフェタミンが検出され急性覚醒剤中毒と診断した。今後,一般検索で原因不明のCPA症例では覚醒剤などの特殊な薬物中毒についても血中の濃度測定が重要であると考えられた。