著者
水沢 弘哉 小口 智彦 道面 尚久 小泉 孔二 三村 裕次 齊藤 徹一 加藤 晴朗
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.105, no.1, pp.17-21, 2014-01-20 (Released:2015-01-30)
参考文献数
14
被引用文献数
2 3

(症例1)患者は28歳の女性.腹痛と頻尿・残尿感を主訴に産婦人科クリニックを受診した.MRI検査で膀胱頂部に接する5 cm径の腹膜外腫瘤を認め,尿膜管腫瘍の疑いがあると当科へ紹介された.下腹部正中に鶏卵大の硬い腫瘤を触知した.尿所見は正常,膀胱鏡検査で膀胱頂部の粘膜の一部に発赤を認めたが尿細胞診検査は陰性であった.尿膜管腫瘍の診断で手術を開始したが,術中迅速診断でデスモイド腫瘍と診断され,腫瘤摘除術を施行した.術後7年を経て再発転移を認めていない.(症例2)患者は71歳の男性.下腹部膨隆を主訴に当院外科を受診した.CT検査で15 cm径の腫瘍が膀胱前腔に存在し,尿膜管腫瘍の疑いがあると紹介された.下腹部に小児頭大の硬い腫瘤を触知した.尿所見の異常はなかった.膀胱鏡検査で膀胱頂部は著明に圧排されていたが粘膜面の異常はなかった.尿膜管腫瘍の診断で手術を行ったが,術中迅速診断は悪性所見なしであった.腫瘤は膀胱と連続していたため,腫瘤摘除術・膀胱部分切除術を施行した.最終診断は孤立性線維性腫瘍であった.術後5年以上経過しているが再発転移はみられていない.膀胱頂部に存在する腫瘍は尿膜管癌を念頭に手術を行うことになるが,良性腫瘍の可能性も考えて手術に臨み,過大手術とならないよう留意すべきである.
著者
田中 昌史 隈元 庸夫 齊藤 徹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.A3O2020, 2010

【目的】<BR>除雪作業は降雪地域における冬期間の腰痛発症の主要な要因であり、積雪量の増加に伴う雪の投擲高さが増加することは、より強い筋活動が要求され、動作の反復により疼痛や疲労感などの出現に影響するものと思われる。本研究は、ショベルを用いた模擬除雪動作において投擲高さの違いによる筋疲労の変化を筋電図学的に検討することを目的とする。<BR><BR>【方法】<BR>被験者は高血圧や有痛性疾患などのリスクを有しない健常男性8名(21.3±1.6歳、身長167.5±5.5cm)とした。運動課題は、室内にて市販の柄長型除雪用ショベルを把持し、ショベル上に置いた5kgの重錘バンドを一定の高さ(身長の50、75、100%)に水平設置したバーを超える投擲とし、被験者にはあらかじめ負荷の無い投擲動作を反復させ、課題施行時の両足部およびショベルの位置は同一となるよう設定した。投擲動作は、重錘バンドを投げ上げる投擲期(2秒)、ショベルを開始位置に戻す復元期(2秒)、ショベルを床上に置いて静止する休止期(2秒)の計6秒を1動作として、メトロノームのリズムに合わせて100回反復するよう指示した。各高さの運動課題は充分な休息時間を経て実施した。運動課題時の筋積分値(IEMG)および平均周波数(MPF)を表面筋電計(MyoSystem1400 EM123、Noraxon社)にて測定し、導出筋は両側の僧帽筋上部線維、腰部脊柱起立筋、大腿直筋とした。統計処理は、Friedman's test後、post hoc testとしてWilcoxon t-test with Bonferroni correctionを用いて、有意水準を5%未満とした。<BR><BR>【説明と同意】<BR>被験者には本研究の意義、目的、方法、起こりうる危険、動作施行の中止基準について、口頭ならびに文書によるインフォームドコンセントを行った。<BR><BR>【結果】<BR>両側の僧帽筋および腰部脊柱起立筋のMPFとIEMGはいずれの高さにおいても有意な変化を認めなかったが、両側の大腿直筋は全ての高さにおいてMPFの有意な低下とIEMGの有意な増加が認められた。投擲動作途中から非投擲側腰部脊柱起立筋の休止期における高自発放電(動作開始当初の休止期自発放電平均値+2SD)が全ての高さで見られ、高自発放電と大腿直筋のMPFの低下およびIEMGの増加はほぼ同時期に出現する傾向があった。高自発放電の出現数は高さ別に、50%で7例、75%で8例、100%で7例であった。また、出現時期は高さ別に、50%では61.9±11.1回、75%で64.5±17.7回、100%で55.6±21.4回であった。<BR><BR>【考察】<BR>出現すると推測していた腰部脊柱起立筋の疲労が見られなかったことから、本実験の負荷は僧帽筋および脊柱起立筋に対して低いものであったことが考えられた。一方、ショベル先端の挙上に作用する非投擲側腰部脊柱起立筋の高自発放電および大腿直筋の疲労が見られたことから、大腿直筋による膝伸展によってショベルを挙上させ、腰部脊柱起立筋の活動を代償した投擲であったことが考えられ、下肢筋力低下を生じやすい高齢者では非投擲側腰部脊柱起立筋の疲労が生じ、腰痛等の発生につながる可能性が示唆された。また、高自発放電の出現時期から投擲高さおよび投擲回数をふまえて定期的に休息を取る必要性が考えられた。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>降雪地域において自己所有の住居に居住する者にとって除雪は避けられない動作であり、安全な居住環境を保全する上で冬季の重要な作業である。安全な除雪動作手順の開発や積雪に伴う行政等による除排雪基準の確立は、高齢化および過疎化が進展する地域において重要と考える。除雪動作における筋活動および筋疲労の見地からこれらの一助となることを期待したい。<BR>