著者
大津山 堅介 齋藤 悠介 小松崎 暢彦 石井 沙知香 松本 慎一郎 竹中 大貴 廣井 悠
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.1350-1357, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
32
被引用文献数
1

新規コロナウイルス(COVID-19)によって引き起こされる重症急性呼吸器症候群(SARS CoV-2)は,世界規模での歴史的な脅威となっている.都市封鎖(ロックダウン)や移動制限は,コミュニティの感染を最小限に抑える効果的な戦略でる一方,数ヶ月に及ぶ経済活動の停止は地域経済にとって深刻な打撃を与える.本稿では,主要な感染拡大国での事例比較を通じ,都市封鎖の類型とその課題を特定し,防災研究と公衆衛生の共通点を見出すことを目的とする.12カ国の都市封鎖またはそれに類似する施策比較から,都市封鎖は,早期水際対策・行動管理型,強権的移動規制型,地域別対応型,モラル依存型の4つに分類された.日本では自粛要請によってモラル依存型に分類される.このタイプでは,自助,共助,公助のバランスが重要であるように,感染症においても市民のリスク認識と管理が求められる.今後の学術的課題として,感染拡大終息後の都市封鎖の定性的・定量的調査や移動制限の不均衡,すなわちテレワークや疎開ができない移動制限によって著しい不利益を被る人々のリスク低減方法の検討は喫緊の課題である.
著者
齋藤 悠介 廣井 悠
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.880-887, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
33

日本の津波伝承において、津波碑は古くから広く使われてきた伝承手段である。本研究では、南海地震津波被災地域の事例を用いて、津波伝承における津波碑が人々の災害前の防災意識に与える影響について考察した。文献をもとにした調査やアンケート調査を通じて、津波碑は強力な情報源としての役割はなく、また人々の具体的で直接的な行動の喚起には繋がりにくいことが分かった。このことから、津波碑は具体的なメッセージを伝える手段としては限界があると考えられる。一方で、即地性が高く永続性のある記録の手段として有効であり、視覚的効果に伴う防災意識の啓発には一定の効果があると考えられる。以上より、「記録」と「啓発」の点に関して人々の防災意識に影響を持つと考えられる。