著者
廣井 悠
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.902-909, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
7
被引用文献数
5 17

COVID-19対策としてロックダウンを行った多くの国では,大規模な失業を含む大きな経済的・社会的コストに直面している.これに対して日本では,2020年4月7日に政府が東京や大阪など7都府県に非常事態宣言を出し,可能な限り外出を控えるようにというメッセージを発した.本研究は,このCOVID-19に対する非常事態宣言の外出自粛に関する影響を調査した。結果として調査時点では,何らかの目的で外出を控えた人は9割いることや,「食事・交際・娯楽」のために外出を控える人が7割、「買い物」のために外出を控える人が5割、「通勤」のために外出を控える人が3割いたことが明らかになった。また、外出目的によって自粛を促す施策が異なることがわかった。
著者
大津山 堅介 齋藤 悠介 小松崎 暢彦 石井 沙知香 松本 慎一郎 竹中 大貴 廣井 悠
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.1350-1357, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
32
被引用文献数
1

新規コロナウイルス(COVID-19)によって引き起こされる重症急性呼吸器症候群(SARS CoV-2)は,世界規模での歴史的な脅威となっている.都市封鎖(ロックダウン)や移動制限は,コミュニティの感染を最小限に抑える効果的な戦略でる一方,数ヶ月に及ぶ経済活動の停止は地域経済にとって深刻な打撃を与える.本稿では,主要な感染拡大国での事例比較を通じ,都市封鎖の類型とその課題を特定し,防災研究と公衆衛生の共通点を見出すことを目的とする.12カ国の都市封鎖またはそれに類似する施策比較から,都市封鎖は,早期水際対策・行動管理型,強権的移動規制型,地域別対応型,モラル依存型の4つに分類された.日本では自粛要請によってモラル依存型に分類される.このタイプでは,自助,共助,公助のバランスが重要であるように,感染症においても市民のリスク認識と管理が求められる.今後の学術的課題として,感染拡大終息後の都市封鎖の定性的・定量的調査や移動制限の不均衡,すなわちテレワークや疎開ができない移動制限によって著しい不利益を被る人々のリスク低減方法の検討は喫緊の課題である.
著者
廣井 悠 大森 高樹 新海 仁
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.5_111-5_126, 2016 (Released:2016-04-25)
参考文献数
7
被引用文献数
4

本研究は首都圏を対象として大都市避難シミュレーションを構築し、東日本大震災時における首都圏滞在者の移動データを利用して作成した帰宅意思モデルを用いて、帰宅困難者対策の量的評価を行うとともに、災害時における混雑危険度指標を提案するものである。この結果、首都圏において仮に大規模災害時に帰宅困難者の一斉帰宅が行われると、6人/m2を超える密集空間の道路延長距離は東日本大震災の約137倍となることや、このような歩道の混雑を低減するためには就業者の一斉帰宅抑制がより効果的であること、車両の平均移動速度が3km以下となる車道の渋滞は比較的長期かつ広域に発生することが判明した。
著者
関谷 直也 廣井 悠
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.495-500, 2011-12-15 (Released:2016-08-31)
参考文献数
6
被引用文献数
1

3 月11 日に発生した東北地方太平洋沖地震の後,調査からの推定上,首都圏で約420 万人,東京で約352 万人が帰宅できなかった. 帰宅困難の問題は「帰宅に困ること」それ自体が問題なのではなく,「災害時における集合的移動行動」による混乱としての「渋滞」および「火災」「群集なだれ」の発生である.危惧すべきは,多くの人が3 月11 日の経験を踏まえ,多くの人が自宅に帰ろうとし,首都直下地震において大規模な混乱が発生することである. 帰宅困難者発生後の問題は,滞留後の滞留者対策,帰宅可能箇所などの情報伝達,その後発生する食料不足,モノ不足の対策である. 災害被害が大きくない場合の帰宅困難者問題に関しては公共交通機関の情報の提供が重要である.今後携帯電話以外のデジタルサイネージなどを用いた情報提供なども視野に含めていくべきであろう.
著者
山田 拓実 大津山 堅介 廣井 悠 加藤 孝明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.1110-1117, 2022-10-25 (Released:2022-10-25)
参考文献数
32

都市計画と河川整備が連携した流域治水の観点より、本稿では河川整備の効果と将来の世帯増減の変化を踏まえ、即地的かつ流域全体を見据えた都市側の治水対策を検討することを通じて都市計画分野において生じる課題を抽出することを目的とする。河川整備前後の浸水リスクの比較から流域自治体により河川整備の効果が異なることが明らかになった。将来の世帯増減と合わせて検討したところ、長期的な都市の状況を考慮する必要性や周辺区域の治水対策・自治体が主導する都市計画制度との整合性が求められることが明らかとなった。
著者
齋藤 悠介 廣井 悠
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.880-887, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
33

日本の津波伝承において、津波碑は古くから広く使われてきた伝承手段である。本研究では、南海地震津波被災地域の事例を用いて、津波伝承における津波碑が人々の災害前の防災意識に与える影響について考察した。文献をもとにした調査やアンケート調査を通じて、津波碑は強力な情報源としての役割はなく、また人々の具体的で直接的な行動の喚起には繋がりにくいことが分かった。このことから、津波碑は具体的なメッセージを伝える手段としては限界があると考えられる。一方で、即地性が高く永続性のある記録の手段として有効であり、視覚的効果に伴う防災意識の啓発には一定の効果があると考えられる。以上より、「記録」と「啓発」の点に関して人々の防災意識に影響を持つと考えられる。