著者
大渓 俊幸 綱島 浩一 齋藤 治 堀 彰 加藤 進昌
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.706-712, 2002-12-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
15

統合失調症の入院が長期化する要因を検討した. 調査期間を1992年6月30日から1997年6月30日の5年間とし, 対象患者は調査開始の1992年6月30日からさかのぼること2年間の間に国立精神・神経センター武蔵病院に入院した71例とした. これら71例中, 調査期間の5年間に退院して外来に移行した患者43名から, 入院期間が1カ月以内の患者4名を除いた39名を外来移行群とし, 調査期闇終了後も引き続き入院していた患者15名を入院継続群とした. これら両群で, 1992年の時点での病歴, 精神症状, 総合評価尺度との関連, 入院継続患者では5年間の精神症状の変化について検討した. 要因解析に用いる症状評価尺度は, Manchester scale (MS), ward behavior rating scale (WBRS)とし, 抗精神病薬の投与量は, haloperidolに換算して検討した. 1992年の調査時点では, 外来移行群は入院継続群よりもMSの各スコアとWBRSのスコアで陰性症状関連項目が高得点であったが, 陽性症状関連項目では有意差がなかった. また, 継続入院群では, その間に陰性症状が悪化するが, MSで高いスコアの陽性症状では改善がみられなかった. 今回の結果から, 退院を阻害する因子としては, 陰性症状よりも陽性症状やそれにともなう問題行動の有無が強く関連する可能性が示された.