著者
柳瀬 晃子 西沢 幸二 井上 治 洲加本 孝幸 齋藤 雄二
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.108, no.2, pp.77-83, 1996 (Released:2007-02-06)
参考文献数
25
被引用文献数
3 3

加味帰脾湯(KMK)の抗侵害受容作用機序を明らかにする目的で,マウスを用いて,KMKの酢酸ライジング反応抑制に対する各種受容体遮断薬,生体モノアミン合成阻害薬あるいは澗渇薬処置および脊髄切断の影響について調べた.KMKは750mg/kg以上の経ロ投与により有意な酢酸ライジング反応抑制作用を示した.KMKの酢酸ライジング反応抑制作用は,オピオイド受容体拮抗薬ナロキソン前処置の影響を受けず,アドレナリンα2-受容体遮断薬ヨヒンビンやセロトニン受容体遮断薬シプロヘプタジン処置により消失した.したがって,KMKの作用にオピオイド受容体は関与せず,α2受容体やセロトニン受容体が関与していると考えられた.また,KMKの酢酸ライジング反応抑制作用は,生体モノアミン合成阻害薬あるいは洞渇薬であるα-メチル-p-チロシン,ジエチルジチオカルバミン酸,レセルピンおよびp-クロロフェニルアラニンの処置によって消失したことから,生体モノアミンが関与していることが示唆された.さらに,KMKの酢酸ライジング反応抑制作用は脊髄切断により消失したため,その作用部位は脊髄より上位であると考えられた.これらのことから,KMKIの抗侵害受容作用には脊髄より上位のノルアドレナリン系やセロトニン系神経等の下行性痛覚抑制機構が関与していると考えられた.