著者
ハッサニン アミン 桑原 佐知 ヌルヒダヤット 塚本 康浩 小川 和重 平松 和也 佐々木 文彦
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.921-926, 2002
被引用文献数
3 56

エストロジェン様化合物の魚への影響を研究する目的で,2つの汚染河川(石津川と和田川)と対照地域に生息する成熟雄性コイのゴナドソマチックインデックス([精巣重量/体重]×100:GSI)と精巣の形態を1998年6月〜2001年3月までの期間調べた.石津川のノニルフェノール,ビスフェノールAと17β-エストラジオールの含有濃度は和田川の3〜4倍高かった.繁殖前期と繁殖期では,3地域のコイの体重に有意の差はなかった.石津川のコイの体重は繁殖後期でのみ和田川のものより小さかった(P<0.05).石津川に生息するコイのGSIと精巣重量は精巣周期の全期間で対照のものより小さく(P<0.05),和田川のコイと比較すると繁殖前期と後期でより小さかった(P<0.05).組織学的な異常は調べた全精巣で見られなかった.精巣の組織学的な所見から,石津川のコイの精子形成開始時期は他の地域のものに比べて遅延していた.これらの結果は,石津川の水中に含有するエストロジェン様化合物がコイの精巣の発達に有害な影響を与えているということを明らかに示している.