著者
A. K. M. Humayun KOBER 青山 真人 塚原 直樹 杉田 昭栄
出版者
Japanese Soceity for Animal Behaviour and Management
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.97-103, 2011-09-25 (Released:2017-02-06)
参考文献数
26

トラック輸送およびその際に使用する運搬用ケージのタイプが、ニワトリ(Gallus domesticus)の副腎に及ぼす生理学的および生化学的影響について検討した。2010年12月から翌年2月の間、12羽の成オスニワトリを、C1、T1およびT2の3つの実験区に分けた。C1区においては、通常飼育に用いていたのと同じ金網ケージ(95×60×70cm)にニワトリを2羽入れ、輸送を施さなかった。T1区においては、前述した通常飼育用の金網ケージをトラックの荷台に積載し、2〜3羽を同時に30分間輸送した。T2区では現場でニワトリの輸送の際に用いている小型のプラスチックケージ(68×48×20cm)に3羽を入れ、30分間輸送した。輸送終了直後の血中コルチコステロン(CORT)濃度をラジオイムノアッセイで、副腎組織中のチロシン水酸化酵素(TH)およびリン酸化THの発現量をウエスタンブロット法で測定した。その結果、ケージのタイプに関わらず、輸送をした区(T1,T2区)はC1区と比較して血中CORT濃度が有意に高く(P<0.05)、輸送がニワトリにとってストレスとなることが示唆された。T2区の血中CORT濃度はT1のそれと比較して若干高かったが、T1とT2区の間に有意差はなかった。THの発現量に対するリン酸化THの発現量の割合は、3つの実験区いずれの間にも有意差はみられなかった。これらの結果より、30分間の輸送はニワトリにとってストレスとなるが、小型ケージに収納されて輸送されることは、少なくとも冷涼な気候下で30分間であればストレスとはならないことが示唆された。