著者
杉田 昭栄
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.143-149, 2007 (Released:2008-08-31)
参考文献数
24
被引用文献数
4 1

鳥類は,視覚が発達した動物である.彼らは,すみやかに遠くに焦点を合わせることも,近くのものに焦点を合わせることも自由に行なえる.また,色の弁別能力も高い.このように視覚に優れる仕掛けは眼球のつくりにある.その優れた視力は,水晶体および角膜の形を変え,高度にレンズ機能を調節することにより行なう.このために,哺乳類とは異なるレンズ系を調節する毛様体の特殊な発達や哺乳類には無い網膜櫛もみられる.また,網膜の視細胞には光波長を精度高く選別する油球を備えているばかりでなく,各波長に反応する視物質の種類がヒトのそれより多い.したがって,ヒトが見ることのできない紫外線域の光波長を感受することもできる.さらには,この視細胞から情報を受けて脳に送る神経節細胞もヒトの数倍の数を有する鳥類が多い.このような仕組が鳥類の高次の視覚を形成している.
著者
青山 真人 夏目 悠多 福井 えみ子 小金澤 正昭 杉田 昭栄
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.109-118, 2010

本研究の目的は、捕食動物に由来する種々の刺激がヤギに及ぼす忌避効果を、ヤギの生理学的および行動学的反応を解析することによって検討することである。実験1においては、7つの刺激-CDプレイヤーで再生したチェーンソーの運転音(ChS)、イヌの吠え声(DoB)、オオカミの遠吠え(WoH)、ライオンのうなり声(LiG)、トラのうなり声(TiG)、テレビモニターに映したオオカミの映像(WoV)、実物のイヌの毛皮(DoS)-をそれぞれ4頭のメスシバヤギに提示し、その反応を観察した。DoBおよびDoS区において、他の区に比較して血中コルチゾル(Cor)濃度が有意に高く(P<0.01、反復測定分散分析およびTukeyの検定)、30分間の身繕い行動の頻度が有意に少なかった(P<0.1、Friedmanの検定とNemenyiの検定)。他の刺激については、いずれの測定項目においても対照区(提示物なし、音声を出さないCDプレイヤー、映像を映さないテレビモニター)との間に違いはなかった。実験2においては、実験1と同じ4頭のヤギを用いて、ChS、DoB、WoH、LiG、TiG、DoSの6つの刺激の忌避効果を検討した。飼料のすぐ後方にこれらの刺激のいずれかを提示し、それぞれのヤギがこの飼料を摂食するまでに要する時間を測定した。4頭いずれの個体も、DoBおよびDoS区においては30分間の観察時間中に一度も飼料を摂食しなかった。一方、他の刺激においては遅くとも126秒以内には摂食を開始した。各個体においで、実験2における結果と、実験1における結果との間には強い相関が観られた(対血中Cor濃度:r=0.78〜0.94、対身繕い行動の頻度:r=-0.73〜-0.98)。実験3では、メスシバヤギ5頭を用い、実験1と同じ方法でChS、DoB、イヌの置物(DoF)、DoS、段ボール箱で覆ったイヌの毛皮(DSC)の効果を検証した。実験1と同様、DoBおよびDoS区において、有意な血中Cor濃度の増加と身繕い行動の頻度の減少が観られた。DSC区においては5頭中4頭が、顕著な血中Cor濃度の増加あるいは身繕い行動の頻度の減少のいずれかを示した。これらの結果から、本研究で観られたイヌの吠え声、あるいはイヌの毛皮に対する忌避効果は、ヤギがこれらの刺激に強い心理ストレスを持ったことが原因であると示唆された。さらに、視覚的な刺激は、少なくともそれが単独で提示された際には効果が薄いこと、聴覚的な刺激および嗅覚的刺激が強い忌避効果をもたらす可能性が示唆された。
著者
鎌田 直樹 遠藤 沙綾香 杉田 昭栄
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.84-90, 2012 (Released:2012-04-27)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

ハシブトガラスCorvus macrorhynchosとハシボソガラスC. coroneの最大咬合力と最大咬合圧について圧力測定フィルムを用いて測定し,体重や顎筋質量との関係を調べた.ハシブトガラスの顎筋質量,最大咬合力および最大咬合圧はハシボソガラスのそれに比べ有意に大きく,これらの値が体重に正の相関をすることが明らかになった.また,閉口筋質量1単位あたりの最大咬合力はハシブトガラスよりもハシボソガラスの方が大きいことがわかった.
著者
刘 利 鎌田 直樹 杉田 昭栄
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.77-83, 2012 (Released:2012-04-27)
参考文献数
28

本研究においては光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡を用いて,ハシブトガラスCorvus macrorhynchos舌の表面微細構造を観察した.本種の舌は舌尖,舌体,舌根の3つの部位から構成され,舌先の先端は左右に2分されており,左右共に上下二層構造を持っていた.舌体は扁平状で円形の舌隆起を有し,その尾側縁には円錐乳頭が連なっており,外側にはより大型の乳頭が見られた.さらに,粘膜下層には2種類の結合織芯が存在し,その境界は明瞭であった.舌根の表面および舌体の側面には大型の唾液腺の開口部が観察され,それらの周辺には味孔が分布していた.このように,ハシブトガラスの舌の形態・構造には動物食性鳥類のものと類似した点が多く,わずかに植物食性の鳥類の特徴も合せ持つことが明かとなった.また,形態に基づいた機能的類型に照らし,本種の舌は採集型と嚥下型の両方の特徴を合わせ持つと考えられた.
著者
鎌田 直樹 山田 利菜 杉田 昭栄
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.191-199, 2011 (Released:2011-10-26)
参考文献数
22
被引用文献数
2 1

We investigated whether there are significant differences in neck muscle mass, maximum peck force, pressure and maximum pull force between Jungle Crows Corvus macrorhynchos and Carrion Crows C. corone. The maximum peck force and pressure were measured using pressure sensitive film. The maximum pull force was measured with spring balances. For male Jungle Crows, neck muscle mass, maximum peck force, pressure and maximum pull force were 8.27 g, 26.8 N, 80.4 MPa and 9.54 N; for females they were 6.82 g, 22.3 N, 69.7 MPa and 8.25 N. Those values for male Carrion Crows were 6.69 g, 22.3 N, 59.7 MPa and 4.07 N;, whereas for females they were 4.50 g, 15.1 N, 53.2 MPa and 2.71 N. Furthermore, neck muscle mass, maximum peck force and maximum pull force were positively correlated with body mass in both species. There were no significant differences in the ratio between the cervical levator mass and the cervical depressor mass, and the maximum peck force exerted by one unit of the cervical depressor mass between Jungle and Carrion Crows. However, the maximum pull force exerted by one unit of the cervical lavator and depressor mass of Jungle Crows was significantly larger than that of Carrion Crows.
著者
山田 未知 平山 紀子 山田 幸二 杉田 昭栄 山内 克彦
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.166-174, 2002
被引用文献数
1

照明の色が豚の発育性・産肉性および脂肪組織と筋肉の脂肪酸組成に及ぼす影響について検討した。肥育前期・後期・試験期間全体の一日平均増体量および飼料要求率は, 無灯火区, 赤色照明区, 青色照明区, 白熱灯照明区の各区間に有意な差は見られなかった。枝肉歩留および背脂肪の厚さにおいても各区間に有意な差は見られなかった。背脂肪の脂肪酸組成ではC18:0が青色照明区で低い値を示し, 無灯火区と青色照明区間に有意な差が見られた (P<0.05)。また, C18:2では無灯火区が低い値を示し, 無灯火区と赤色照明区間に有意な差が見られた (P<0.05)。胸最長筋内脂質の脂肪酸組成ではC14:0が無灯火区で高い値を示し, 無灯火区と白熱灯照明区間に有意な差が見られた (P<0.05)。またC18:0では赤色照明区が高い値を示し, 無灯火区と赤色照明区間, 赤色照明区と青色照明区および白熱灯照明区間に有意な差が見られた (P<0.05)。その飽和脂肪酸は赤色照明区が高い値を示し, 赤色照明区と青色照明区および白熱灯照明区間, 青色照明区と白熱灯照明区間に有意な差が見られた (P<0.05)。また不飽和脂肪酸は赤色照明区が低い値を示し, 赤色照明区と青色照明区および白熱灯照明区間に有意な差が見られた (P<0.05)。さらに不飽和脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比では赤色照明区が高い値を示し, 赤色照明区と青色照明区および白熱灯照明区間に有意な差が見られた (P<0.05)。血中脂質成分では, 中性脂肪, 総コレステロールおよびHDL-コレステロール量は各区間に有意な差は見られなかった。しかし, 総コレステロールに対するHDL-コレステロール比では青色照明区が低い値を示し, 青色照明区と赤色照明区間に有意な差が見られた (P<0.05)。
著者
山田 未知 平山 紀子 山田 幸二 杉田 昭栄 山内 克彦
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 = The Japanese journal of swine science (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.166-174, 2002-09-20
参考文献数
17
被引用文献数
1

照明の色が豚の発育性・産肉性および脂肪組織と筋肉の脂肪酸組成に及ぼす影響について検討した。肥育前期・後期・試験期間全体の一日平均増体量および飼料要求率は、無灯火区、赤色照明区、青色照明区、白熱灯照明区の各区間に有意な差は見られなかった。枝肉歩留および背脂肪の厚さにおいても各区間に有意な差は見られなかった。背脂肪の脂肪酸組成ではC18 : 0が青色照明区で低い値を示し、無灯火区と青色照明区間に有意な差が見られた(P<0.05)。また、C18 : 2では無灯火区が低い値を示し、無灯火区と赤色照明区間に有意な差が見られた(P<0.05)。胸最長筋内脂質の脂肪酸組成ではC14 : 0が無灯火区で高い値を示し、無灯火区と白熱灯照明区間に有意な差が見られた(P<0.05)。またC18 : 0では赤色照明区が高い値を示し、無灯火区と赤色照明区間、赤色照明区と青色照明区および白熱灯照明区間に有意な差が見られた(P<0.05)。その飽和脂肪酸は赤色照明区が高い値を示し、赤色照明区と青色照明区および白熱灯照明区間、青色照明区と白熱照明区間に有意な差が見られた(P<0.05)。また不飽和脂肪酸は赤色照明区が低い値を示し、赤色照明区と青色照明区および白熱灯照明区間に有意な差が見られた(P<0.05)。さらに不飽和脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比では赤色照明区が高い値を示し、赤色照明区と青色照明区および白熱灯照明区間に有意な差が見られた(P<0.05)。血中脂肪成分では、中性脂肪、総コレステロールおよびHDL-コレステロール量は各区間に有意な差は見られなかった。しかし、総コレステロールに対するHDL-コレステロール比では青色照明区が低い値を示し、青色照明区と赤色照明区間に有意な差が見られた。(P<0.05)。
著者
髙津戸 望 青山 真人 杉田 昭栄
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.85-97, 2016-06-25 (Released:2016-12-27)
参考文献数
28

ヒヨドリによる果樹食害の対策法を検討するために、各種光波長の発光ダイオード(LED)を果実に照射し、ヒヨドリの採食行動がどのような影響を受けるかを試験した。実験には、野生から捕獲したヒヨドリを供試した。赤(630nm)、黄(590nm)、緑(525nm)、青(470nm)の4種のLEDと、対照として一般的な蛍光灯を用い、各個体を単独飼育下で実験した。ヒヨドリ5羽に8段階の成熟度の異なるイチゴを同時に提示する選択実験を行なった結果、蛍光灯を照射した対照区でヒヨドリは成熟度が最も高い果実を優先的に選択したが、各色LEDの照射時には、成熟度の高いイチゴを選択する行動に有意差があった。特に青色LED照射時は、ヒヨドリがイチゴを選択するまでの時間が有意に長くなり、イチゴを1つも選択せずに終了した試行が3個体で4試行観察された。一方、ヒヨドリ4羽に7段階の成熟度の異なるブドウを同時に提示する選択実験を行なった結果、いずれのLED照射時においてもヒヨドリは成熟度の高い果実を選択し、その選択行動に相違はなく、青色LED照射時も含め、果実を選択するまでの時間にLEDによる差はなかった。これらの結果より、イチゴでは青色LEDを照射することで、ヒヨドリの採食行動を抑制することが期待できたが、ブドウのようにこの効果が期待できない果実もあることが分かった。LEDの照射によるヒヨドリの果実採食行動への影響は、本来の果実の色により異なることが示唆された。
著者
青山 真人 杉田 昭栄
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、ヤギがトラック輸送により乗り物酔い(動揺病)になるか否かを検討した。ヒトに悪心(気分が悪いこと)や嘔吐を誘発する薬剤であるシスプラチンをヤギに投与したところ、顔を下に向け、動きが鈍くなった(これを「悪心様状態」とする)。また、ヤギをトラックで輸送すると、悪心様状態と類似の状態が誘発された。酔い止め薬として市販されている「ジフェンヒドラミン」を輸送前にヤギに投与すると、悪心様状態はかなり軽減された。これらのことより、ヤギは輸送により動揺病になるものと考えられた。
著者
青山 真人 駒崎 孝高 杉田 昭栄 楠瀬 良
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.241-250, 2003-05-25

ウマ同士の社会行動にともない顔や体に現れる特徴の意味の把握は,ウマがヒトに対しても同じ行動を取ることから,現場でのウマの取り扱いにおいて重要な情報になると考えられる.そこでわれわれは,日常的にウマに接している者(ウマ取扱者)およびウマに接する機会が少ない者(非取扱者)を対象に,互いに社会行動をしている2頭のウマの写真からその社会的関係を推察し,さらに判断の手がかりとして注目した部位を回答させるアンケート調査を行なった.ウマ取扱者189名の正解問題数の平均は6.01問(全11問 ; 正解率54.6%),非取扱者53名のそれは5.26問(正解率47.9%)であった.両群とも,無作為に回答した場合よりも有意に高い正解率であったが,ウマ取扱者のそれは非取扱者のそれよりも有意に高かった.ウマ取扱者が回答の際に注目した部位については,耳が38.0%でその頻度がもっとも高く,次いで体全体33.5%,顔全体 23.9%の順であった.非取扱者による注目部位は,高い順に耳29.6%,顔全体20.6%,目15.6%であった.一方,回答者を7問以上正解者(7以上群)と6問以下正解者(6以下群)に分けて比較すると,ウマ取扱者については耳(ただしP=0.091)および顔全体において,非取扱者では首の向き・角度および体全体において,7以上群の方が有意に高い頻度でこれを注目した.各問題の回答を解析すると,一方のウマがその耳や首をもう一方のウマに向けている状態(社会的に劣位のウマが耳を上位のウマに向けて気にしている様子など)が正解の手がかりとなった状況については,ウマ取扱者と非取扱者の正解率や観察の仕方は類似した.しかし,ウマの耳や首がもう一方のウマの位置と関係なく特異的な状態になる場合(耳を後方へ倒す威嚇の表情など)は,ウマ取扱者と非取扱者の観察の仕方は異なり,ウマ取扱者の正解率が高かった.ウマに接して来た経験をもとにウマの耳および首の向き・角度に注目することは,ウマの社会的な状況を推察するのに有効であると示された.