著者
永島 茜 Akane NAGASHIMA
出版者
武庫川女子大学学校教育センター
雑誌
学校教育センター紀要 = Bulletin of School Education Center (ISSN:24353396)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.15-28, 2023-02-28

本研究の目的は,文化行政におけるアウトリーチ事業を対象とし,西宮市及び堺市の事例からその在り方を考察することである。アウトリーチはもともと福祉分野の実践であるが,2000 年代初頭から,芸術分野でも民間から始められた。文化施設建設と貸館中心の文化行政への批判からアートマネジメントの考え方が注目されたことや,従来の芸術鑑賞教室とは異なる目新しさなど複合的背景から,アートNPO やオーケストラなどが実践を重ね,更には地方文化施設を通じた地域活性と結びついて,総務省の外郭団体が音楽やダンスのアウトリーチ事業を手掛けるに至った。そうして現代日本における文化芸術活動には,様々な社会的課題の解決の役割が付与され,それらに関連の深いアウトリーチ活動は文化行政の事業として定着しつつある。しかしながら,外郭団体を含む行政の事業としての観点からの検討は少ない。ところで近畿圏は,歴史文化が集積し,首都圏に匹敵する経済の中心でもあるが,アウトリーチのみならず文化行政の専門性等においても.首都圏か地方の事例が取り上げられる傾向にある。そこで本研究では,近畿圏より西宮市及び堺市を対象として,そのメリットや課題などを検討し,その在り方を考察する。