著者
大津 尚志 Takashi OTSU
雑誌
学校教育センター紀要 = Bulletin of School Education Center (ISSN:24353396)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.48-58, 2022-02-28

「校則裁判」は1980 年代にはじまるが,最近になって髪色を黒染するべき,という指導をめぐって大阪地裁判決が下された(令和3 年2 月16 日)。判決では,校則に関する生徒側の主張は退けられた。校則の法的性質,頭髪の規制と人権の関係,頭髪規制の目的などを論点としてとりあげて,本判例の示す見解を分析する。原告にとって実質的敗訴である内容を検討する。本件は本稿執筆時(2021 年10 月)では控訴審が係争中である。判例についてのこれまでの「校則裁判」の判例史に載せることも含めた評釈を行い,問題性を指摘する。さらに加えて,訴訟提起後に文部科学省や教育委員会が「校則の見直し」を呼びかけるなどの動きが生じていて,大阪府のみならず全国に「訴訟外効果」が生じていることの実態を明らかにすることを研究目的とする。
著者
山口 豊 Yutaka YAMAGUCHI
雑誌
学校教育センター紀要 = Bulletin of School Education Center (ISSN:24353396)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.122-129, 2021-03-31

若年層を中心に同意・承認・確認を行う表現形式に,跳ね上げイントネーションを伴う「~くない?」というのがある。本来は形容詞型の活用を持つ語での使用であったが,形容詞型に限らず,動詞,名詞を前接することがあることが先行研究で報告されている。また,打消し語を前接して原因理由を述べる表現として「くて」という言い方も若年層を中心に見られるようである。そこでその実態についてアンケートを用いてそれぞれ前接する語の種類について調査するとともにそのような表現を用いることの要因について考察した。その結果,「くない?」が形容詞,動詞,形容動詞,助動詞,名詞,接尾語を前接とするのに対し,「くて」に前接するのは形容詞,動詞,形容動詞,助動詞と,「くない?」に比べて前接する品詞が限られていることが確認できた。
著者
永島 茜 Akane NAGASHIMA
出版者
武庫川女子大学学校教育センター
雑誌
学校教育センター紀要 = Bulletin of School Education Center (ISSN:24353396)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.15-28, 2023-02-28

本研究の目的は,文化行政におけるアウトリーチ事業を対象とし,西宮市及び堺市の事例からその在り方を考察することである。アウトリーチはもともと福祉分野の実践であるが,2000 年代初頭から,芸術分野でも民間から始められた。文化施設建設と貸館中心の文化行政への批判からアートマネジメントの考え方が注目されたことや,従来の芸術鑑賞教室とは異なる目新しさなど複合的背景から,アートNPO やオーケストラなどが実践を重ね,更には地方文化施設を通じた地域活性と結びついて,総務省の外郭団体が音楽やダンスのアウトリーチ事業を手掛けるに至った。そうして現代日本における文化芸術活動には,様々な社会的課題の解決の役割が付与され,それらに関連の深いアウトリーチ活動は文化行政の事業として定着しつつある。しかしながら,外郭団体を含む行政の事業としての観点からの検討は少ない。ところで近畿圏は,歴史文化が集積し,首都圏に匹敵する経済の中心でもあるが,アウトリーチのみならず文化行政の専門性等においても.首都圏か地方の事例が取り上げられる傾向にある。そこで本研究では,近畿圏より西宮市及び堺市を対象として,そのメリットや課題などを検討し,その在り方を考察する。
著者
大津 尚志 Takashi OTSU
出版者
武庫川女子大学学校教育センター
雑誌
学校教育センター紀要 = Bulletin of School Education Center (ISSN:24353396)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.29-42, 2023-02-28

大阪府内では2017 年に「黒染を強要された」ことを理由に生徒が校則をめぐって訴訟を提起するということがあった。提訴の後,大阪府教育委員会は高校の校則の点検や公開を指示するようになった。それでは,大阪府内の市立(区立)中学校について校則についていかなる実態があるのか。それは,30 年前の中学校の校則や現在の高校の校則と比するとどのような特徴があるのか。現在の高校の校則とはどう違うのか。「細かすぎる校則」や「理由の説明が難しい校則」がやはり存在するのではないか。校則が生徒の権利を意味なく侵害するものになっていないのか。本稿ではそういった観点から校則を分析することを試みる。そして,現在改訂が予定されている『生徒指導提要』の「改訂案」をもとに,現状の問題点を指摘することを考える。
著者
山口 豊 Yutaka YAMAGUCHI
出版者
武庫川女子大学学校教育センター
雑誌
学校教育センター紀要 = Bulletin of School Education Center (ISSN:24353396)
巻号頁・発行日
no.6, pp.122-129, 2021

若年層を中心に同意・承認・確認を行う表現形式に,跳ね上げイントネーションを伴う「~くない?」というのがある。本来は形容詞型の活用を持つ語での使用であったが,形容詞型に限らず,動詞,名詞を前接することがあることが先行研究で報告されている。また,打消し語を前接して原因理由を述べる表現として「くて」という言い方も若年層を中心に見られるようである。そこでその実態についてアンケートを用いてそれぞれ前接する語の種類について調査するとともにそのような表現を用いることの要因について考察した。その結果,「くない?」が形容詞,動詞,形容動詞,助動詞,名詞,接尾語を前接とするのに対し,「くて」に前接するのは形容詞,動詞,形容動詞,助動詞と,「くない?」に比べて前接する品詞が限られていることが確認できた。
著者
酒井 達哉 佐々木 顕彦 西本 望 伊藤 博章 Tatsuya SAKAI Akihiko SASAKI Nozomu NISHIMOTO Hiroaki ITO
雑誌
学校教育センター紀要 = Bulletin of School Education Center (ISSN:24353396)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.109-121, 2021-03-31

本研究では,女子大学を卒業した新卒3 年目までの正規採用の小学校教員を対象に,若手教員の意識や研修課題及び卒業生支援に対する要望を調べ,それらに対する方策について検討を行った。調査の結果,卒業生の若手教員の多くが教職にやりがいを感じながらも,採用前の予想を上回る学校現場の厳しい困難な現実に直面し,それぞれに研修課題を抱いている実状が明らかになった。例えば,研修課題においては,日々,適切な指導が求められる「教科等の指導」,「生徒指導」や新しい教育課題である「特別の教科 道徳」などのニーズが高いことなどが明らかになった。こうした結果を踏まえ,本研究報告は,在学中の早い段階から教職の魅力を伝えたり,実践的指導力の向上を意識した授業内容を設定したりすることなどの教職課程の改善や,卒業後もニーズに応じた研修を提供するなどの卒業生支援の拡充についての方策を提言している。
著者
村山 太郎 Taro MURAYAMA
雑誌
学校教育センター紀要 = Bulletin of School Education Center (ISSN:24353396)
巻号頁・発行日
no.5, pp.1-14, 2020-03-31

学習指導要領改訂(2017-2018 年)に伴って高等学校国語科では「言葉による見方・考え方を働かせ,言語活動を通して,国語で的確に理解し効果的に表現する資質・能力」の育成という目標が掲げられた。この目標を踏まえた国語の学習はどのようなものがあり得るのだろうか。本稿は,「言葉による見方・考え方を働かせ」るという用語に着目しつつ,『源氏物語』テキストにおける夕霧と雲居雁夫婦の物語を取り上げ,夕霧の在り方に着目して分析し,具体的な教材開発に資する要点を明らかにすることで,この問いに答える端緒を示そうとするものである。