著者
野村 貴郎 Kiro NOMURA
出版者
武庫川女子大学学校教育センター
雑誌
学校教育センター年報 (ISSN:2432258X)
巻号頁・発行日
no.4, pp.1-11, 2019-03-25

助動詞「です」の使用状況を,18 歳~24 歳の377 名に対するアンケートをもとに考察した。その結果,(1)動詞に接続する「です」の用法で,よく普及しているのは「~ませんでした」の形だけであるが,「~でしょう」の形に定着の傾向が見られること。それに対して「~です」や「~たです」の形は認められておらず,その他の形は,まだ“ゆれ”ていること。 (2) 形容詞に接続する「です」の用法は比較的よく普及しており,「~です」「~ですか」「~たです」の形は,ほぼ完全に定着していること。しかし,その他の形は,なお“ゆれ”ていること。 (3) 格助詞(準体助詞も含む)「の」「ん」に接続する「です」の用法は,少なくともこの調査からは徐々に衰退しつつあることなどがわかった。 また,1999 年のデータを用いて,この18 年間の使用率の変化も考察し,(4)形容詞に接続する「です」「~たです」の用法が,ほぼ定着していること。(5)動詞に接続する「~でしょう」の用法や,用言に接続する 「~ないです」の用法が,しだいに定着してきていることなどを確認した。
著者
永島 茜 Akane NAGASHIMA
出版者
武庫川女子大学学校教育センター
雑誌
学校教育センター紀要 = Bulletin of School Education Center (ISSN:24353396)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.15-28, 2023-02-28

本研究の目的は,文化行政におけるアウトリーチ事業を対象とし,西宮市及び堺市の事例からその在り方を考察することである。アウトリーチはもともと福祉分野の実践であるが,2000 年代初頭から,芸術分野でも民間から始められた。文化施設建設と貸館中心の文化行政への批判からアートマネジメントの考え方が注目されたことや,従来の芸術鑑賞教室とは異なる目新しさなど複合的背景から,アートNPO やオーケストラなどが実践を重ね,更には地方文化施設を通じた地域活性と結びついて,総務省の外郭団体が音楽やダンスのアウトリーチ事業を手掛けるに至った。そうして現代日本における文化芸術活動には,様々な社会的課題の解決の役割が付与され,それらに関連の深いアウトリーチ活動は文化行政の事業として定着しつつある。しかしながら,外郭団体を含む行政の事業としての観点からの検討は少ない。ところで近畿圏は,歴史文化が集積し,首都圏に匹敵する経済の中心でもあるが,アウトリーチのみならず文化行政の専門性等においても.首都圏か地方の事例が取り上げられる傾向にある。そこで本研究では,近畿圏より西宮市及び堺市を対象として,そのメリットや課題などを検討し,その在り方を考察する。
著者
大津 尚志 Takashi OTSU
出版者
武庫川女子大学学校教育センター
雑誌
学校教育センター紀要 = Bulletin of School Education Center (ISSN:24353396)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.29-42, 2023-02-28

大阪府内では2017 年に「黒染を強要された」ことを理由に生徒が校則をめぐって訴訟を提起するということがあった。提訴の後,大阪府教育委員会は高校の校則の点検や公開を指示するようになった。それでは,大阪府内の市立(区立)中学校について校則についていかなる実態があるのか。それは,30 年前の中学校の校則や現在の高校の校則と比するとどのような特徴があるのか。現在の高校の校則とはどう違うのか。「細かすぎる校則」や「理由の説明が難しい校則」がやはり存在するのではないか。校則が生徒の権利を意味なく侵害するものになっていないのか。本稿ではそういった観点から校則を分析することを試みる。そして,現在改訂が予定されている『生徒指導提要』の「改訂案」をもとに,現状の問題点を指摘することを考える。
著者
山口 豊 Yutaka YAMAGUCHI
出版者
武庫川女子大学学校教育センター
雑誌
学校教育センター紀要 = Bulletin of School Education Center (ISSN:24353396)
巻号頁・発行日
no.6, pp.122-129, 2021

若年層を中心に同意・承認・確認を行う表現形式に,跳ね上げイントネーションを伴う「~くない?」というのがある。本来は形容詞型の活用を持つ語での使用であったが,形容詞型に限らず,動詞,名詞を前接することがあることが先行研究で報告されている。また,打消し語を前接して原因理由を述べる表現として「くて」という言い方も若年層を中心に見られるようである。そこでその実態についてアンケートを用いてそれぞれ前接する語の種類について調査するとともにそのような表現を用いることの要因について考察した。その結果,「くない?」が形容詞,動詞,形容動詞,助動詞,名詞,接尾語を前接とするのに対し,「くて」に前接するのは形容詞,動詞,形容動詞,助動詞と,「くない?」に比べて前接する品詞が限られていることが確認できた。