著者
中村 英俊 BACON Paul.M. 吉沢 晃
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究課題をめぐり、早稲田大学とブリュッセル自由大学(ULB)との間の国際共同研究を着実に拡充することができた。3月12日にULBで開催した日EUフォーラムでは、研究代表者と研究分担者の全てが研究報告をすることが叶った。理論研究、人権外交、競争政策などの観点から有意義な中間報告の場が得られた。また、オックスフォード大学やキングスカレッジ・ロンドンの研究協力者との共同研究も一定の進展を見ることができた。このような国際共同研究の成果の一つとして、アメリカや中国という大国の背後で日EU関係が有する意義を探る共編著の中で執筆した共同論文は、EUとの比較から日本の国際アクターとしての特質を描いたもので2018年夏に公刊予定である。この論文は、リベラル国際秩序の中でEUとともに日本がどのように振る舞ってきたかを論じようとしたものである。本年度は、イギリスのEU離脱(Brexit)をめぐる公式交渉の1年目とほぼ一致しており、同交渉に関する情報収集も重要な研究調査の対象となった。日本とEUとの二者間関係はEPAとSPAの公式交渉が終わり署名へ向かおうとしている。日本とイギリスの二国間関係も首脳会議によって深まったと言われる。本研究の文脈で、このような現状の考察も試みることができた。政治外交および経済貿易の両分野でリベラル秩序が流動化する状況下で、「安全保障アクター」概念を独自に定義し、EUと日本という国際アクターの行動を正確に描写し、両者の政治関係が持つ意義を深く考察している。