著者
池庄司 敏明 Bakotee Barnard
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.331-337, 1996
参考文献数
9
被引用文献数
2 2

人口64,000を対象に, 1993年10月から1996年2月にかけて, 11,373枚の処理蚊帳を配布した結果, PCDマラリア2罹患率は1993年のピーク1,087/1,000から1995年の605.3/1,000に減少し, さらに1996年末までには182/1,000へ減少すると外挿予想した。妊産婦に2,000枚を無料配布したところ, 新生児の月間罹患数が110から2カ月後に54へ急減し, 低体重新生児(2.1kg未満)の比率も4.2%から1.9%へ減少した。さらに500枚の(Olyset)^[○!R]nets(ペルメトリン既処理蚊帳。住化ライフテク製, 大阪)を15村落に配布したところ, 月間罹患数120が58に減少し10カ月間持続した。これは現地処理蚊帳を配布した31村落での減少率の2倍にあたる。家庭訪問による世論調査では, 市民の蚊帳所有率は50%で, 年間1.5回洗濯し薬剤再処理は8%であった。一人当たり蚊帳所有数0.8-1.0の家族は0の家族より罹患率が有意に少なかった。迅速な蚊帳追加配布と薬剤再処理がこれからの重要課題となる。
著者
池庄司 敏明 Bakotee Barnard
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.25-31, 1997
被引用文献数
2 7

ホニアラ市におけるマラリア駆除計画の一環として, 1993年10月から1996年2月までに11,373枚のペルメトリン処理蚊帳(通常蚊帳4,722枚, Olyset^[○!R]6,651枚)を配布した。配布蚊帳の現状把握とアフターケアーは, 駆除計画の持続性を維持するために大切である。そこで配布蚊帳のペルメトリン定量分析と効力試験をおこない, 処理薬剤の動態を調べ適切な使用法を推奨した。ガスクロで206枚の蚊帳を分析したところ, 残留量は258.1mg/m^2で, 残留量対数は使用月数に一次比例した。オリセットは洗剤使用の洗濯で76.3%の表面薬量を流出し, 太陽光暴露で81.5%が再露出した。無洗剤洗濯が推奨される所以である。蚊帳表面ペルメトリンの昆虫学的有効量閾値は60mg/m^2,疫学的有効量閾値は100mg/m^2で, 蚊は40分間にそれぞれに5.2と4.7回, 9.0と8.2分間係留した。一方, 無処理蚊帳には16回, 28分間係留した。野外では忌避性接触刺激性薬剤から飛逃するので, 昆虫学的に有効な蚊帳でも疫学的には有効ではない。現調査では配布蚊帳のわずか46.6%が昆虫学的に, 37%が疫学的に有効で, 薬剤再処理が切望された。