著者
大場 忠道 Banakar Virupaxa K.
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.223-234, 2007-06-01 (Released:2008-08-21)
参考文献数
56
被引用文献数
6 7

深海底堆積物コア中の底生有孔虫殻の酸素同位体比カーブは,これまでに数多く報告されてきた.それらは,過去の気候変化と海水準変動にとって充分に確立された信頼のおける指標である.将来の気候で起こりそうな動向を理解するためには,過去の間氷期の記録において最も温暖であった期間を正確に見極めることが必要である.この総説で,われわれは過去の間氷期の温暖な程度を理解するために,過去42万年間のこれまでに報告された9つの高分解能な酸素同位体記録を比較した.その酸素同位体比の変動から描き出された間氷期の暖かさの順番は,海洋同位体ステージ(MIS)5.5>9.3>11.3>1>7.5である.この間氷期の暖かさの順番は,Lisiecki and Raymo(2005)の標準酸素同位体比カーブと,また南極のEPICAドームCの氷床コアの水素同位体比カーブときわめてよく似ている.とくに,MIS 5.5中の最も温暖な期間における相対的な海水準は,MIS 1の期間よりあるいは現在より,おそらく約7±4m高かったであろう.一方,MIS 11.3は,過去の5つの間氷期の中で最も長い温暖期であることが明らかになった.この観察事実は,温暖化が進行している将来の地球環境を予測するためには,MIS 5.5と11.3の詳細な研究が本質的で重要であることを明瞭に示唆している.