著者
佐々木 哲也 天内 大樹 下澤 嶽 ササキ テツヤ アマナイ ダイキ シモサワ タカシ Tetsuya SASAKI Daiki AMANAI Takashi SHIMOSAWA
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.23, pp.151-160, 2023-03-31

大学生協は、法令に基づき、学生や教職員らの組合員により組織された機関によって民主的に運営されている。多くの大学生協は全国大学生活協同組合連合会や各地の事業連合に加盟しており、これらの組織から支援を受けつつ、専従の生協職員を雇用して事業を行っている。これにより多様なサービスの安定的・効率的な供給を実現させている一方で、機関運営と事業運営とが隔てられ、組合員による機関運営の役割や裁量は限定的なものとなり、ガバナンスの形骸化という組織運営上の問題を抱えている。 静岡文化芸術大学生活協同組合(以下、文芸大生協)では、2021年度に当時雇用していたパート職員が文芸大生協の資産を不正に取得する被害が発生し、これに対して、損失の処理、情報公開、不正の再発防止などの対処を行った。同様の不正の被害は全国の大学生協で散発しているものの、過去の事例を参照できず、文芸大での不正の対処は困難を極めた。また、不正の再発防止において対策にかかるコストや役員の負担などの難しい課題を残すなど、大学生協のガバナンスの問題を浮き彫りにした。 本稿では、文芸大生協での不正とその対処を事例として報告した上で、大学生協のリスク管理の改善には、全国・地域単位での多層的なガバナンスの構築と、大学の主体的な関与が必要であることを提示する。