著者
井上 彰 後藤 玲子 DUMOUCHEL PAUL
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

平成29年度は、平成28年度の研究、すなわち、「平常時」から(部分的にせよ)かけ離れたカタストロフィ後の世界において、分配的正義を支える価値や理念がいかなる身分を有するのかについて精査し、そのうえでカタストロフィ後の世界に適用可能な価値の構成や適用順序について明らかにする研究をふまえて、わが国を含む様々な国や地域の不平等や不正義の問題への応答を試みた。具体的には、政治哲学パート(井上彰が担当)では、これまでの復興にかかわる分配的正義をめぐる原理的議論を分析哲学の手法を用いて批判的に吟味し、経済哲学パート(後藤玲子が担当)では、復興にかかわるような格差を生む分配メカニズムについての考察を、経済学や社会的選択理論の知見をふまえるかたちで進め、社会哲学パート(Paul Dumouchelが担当)では、カタストロフィ後の経済社会のあり方、ありうべき姿について社会思想史やロボット哲学・倫理学の観点から検討した。その研究成果の一部として、研究代表者の井上が主催するかたちで、2018年1月19日に、Questioning Methods, Theory, and Practice in History and Politicsと題するシンポジウム(Strategic Partnership Program: The Australian National University and the University of Tokyo, Australian National University-University of Tokyo Joint Research Seminar)を東京大学駒場キャンパス(東京大学大学院総合文化研究科グローバル地域研究機構アメリカ太平洋地域研究センター)にて開催し、政治や歴史をめぐる方法論的反省とその刷新可能性について分野横断的に議論した。