著者
佃 栄吉 粟田 泰夫 吉岡 敏和 EMRE Omer DUMAN Tamer Yigit KUSCU Ismail
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.105, no.11, pp.XXI-XXII, 1999-11-15

1999年8月17日の未明に発生したマグニチュード 7.4(米国地質調査所による)のイズミット(Ismit)地震は, トルコ北西部一帯に大きな被害をもたらし, 死者は1万7千人以上(10月14日現在, トルコ危機管理センターによる)に達した. この地震は北アナトリア断層の活動により引き起こされたもので, 被害の分布もおおよそそれに沿って東西に広がっている. 筆者らは9月14日より現地に入り, 地震後のトルコ鉱物資源調査開発総局(MTA)の調査結果をもとに, 陸域に出現した地震断層(約100km)の約60地点で, 断層運動による変位量を正確に計測した. 調査にあたっては最新の2万5千分の1の地形図と地震後に撮影された約1万分の1の航空写真を使用した. その結果, 今回の地震では走向, 変位量分布, 長さがそれぞれ異なる大小7つの断層が活動したこと(Fig. 2), 右ずれ変位が卓越し, その最大変位量は4. 9mであることなどが明らかになった. イズミット湾やサパンジャ(Sapanca)湖域の地震断層については今のところ情報がないが, 今後の陸域の詳細調査と併せて水域の調査を実施し, 地震断層の全体像を明らかにしたいと考えている. 結果は大縮尺の地震断層図として公表することにしている. この地震断層の詳細な記録は断層のセグメント構造に関する研究においてきわめて重要な情報となる. また, トルコにおいては将来の土地利用計画のための基礎資料として利活用されるものと期待している. ここでは今回の緊急現地調査で観察した地表地震断層の一部について紹介する.