著者
中田 高 島崎 邦彦 鈴木 康弘 佃 栄吉
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.107, no.4, pp.512-528, 1998-08-25 (Released:2010-12-22)
参考文献数
28
被引用文献数
15 14

This paper proposes a method to identify the directivity of rupture propagation based on the branching features of active fault traces.Direction of ruptre propagation is closely related to strong ground motions and resulting earthquake damage. Therefore, predicting rupture directivity is crucial in predicting strong motions to mitigate earthquake damage. However, the directions of fault ruptures were ascertained only after earthquakes from the observed seismological records and not before the earthquakes.We found an interdependent correlation between the branching direction of the surface ruptures and the direction of their propagation as shown in Fig. 1, from an investigation of recent earthquake fault ruptures such as the 1995 Northern Sakhalin earthquake, the 1995 Hyogoken-nambu earthquake, the 1992 Landers earthquake, the 1990 Luzon earthequake, the 1979 Imperial Valley earthequake, and the 1930 Kita-Izu earthequake. The branching of faults during rupture propagation is regarded as an effective energy dissipation process and could result in final rupture termination.Because patterns of surface traces of active faults are the results of repeated earthquake faulting, the branching of active faults leads us to suggest that the direction of rupture propagation is also predictable before the active faults generate earthquakes in the future.Several active faults with well-defined branching such as the active faults of the strike -sliptype in the Kobe-Osaka area, those in California, and the active fault sysytem in the northern Luzon, Philippines are examined. Branching of the reverse faults in the foot -hills of Darjeeling Himalaya is also shown as an example of active faults of the dip -slip type. This test clearly shows that the direction of rupture propagation, and in some cases the epicenter location, can be deduced from the branching features on the basis of our proposed method.
著者
奥村 晃史 下川 浩一 山崎 晴雄 佃 栄吉
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.425-438, 1994-03-14 (Released:2010-03-11)
参考文献数
25
被引用文献数
9 19

The middle section of the Itoigawa-Shizuoka Tectonic Line (Middle ISTL) is an active fault system that extends NW-SE for 50km from Matsumoto to Kobuchizawa, in central Japan. The Middle ISTL is characterized by high average slip-rate reaching 8 to 10mm/yr during the Late Pleistocene and Holocene. This is one of the highest slip-rate reported from active faults on land in Japan. Empirical relation between slip-rate and recurrence time indicates that the Middle ISTL may rupture more than once a thousand year. The previously known recurrence time estimates of 3500 to 5000 years were significantly longer than the expected recurrence time. The last faulting event on the Middle ISTL most likely occurred in 841 A. D. according to historic record and paleoseismological works. Since the elapsed time is about 1152 years, the estimation of recurrence time is critical to evaluate the potential of next earthquake. In order to know the history of recent faulting events, we excavated the Gofukuji fault, the northernmost segment of the Middle ISTL at Namiyanagi, south of Matsumoto. Investigation of 6 trenches, 3 test pits and topography around the trenches brought following results. The ages of three most recent faulting events are 445-1386 A. D., 150-334 A. D., and 839-189 B. C. The recurrence time is between 111 and 1236 years. Assuming the correlation of the last event with the 841 A. D. event, the recurrence time is estimated to be 338 to 1172 years. Average recurrence interval in this case ranges 515 to 840 years. The elapsed time of 607 to 1152 years is probably longer than the recurrence time. The average slip rate of the fault since c. a. 6000 B. C. is 9.4±4.5mm/yr left-lateral. The left-lateral coseismic slip during the last event is estimated as 7.5±1.5m.
著者
山崎 晴雄 佃 栄吉 奥村 晃史 衣笠 善博 岡田 篤正 中田 高 堤 浩之 長谷川 修一
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.40, pp.129-142, 1992-12-15
被引用文献数
6

中央構造線(MTL)は西南口本を南北に二分する主要な地質構造線である。この断層は第四紀における日本で最大級の右横ずれ活断層でもある。その活発な活動度にも拘らず, MTLに沿っては歴史地震の発生は知られていない。長期的な地震予知や災害アセスメントに有効な最近の地質時代における断層の運動史を知るため, 1988年の夏中央構造線活断層系の一部である西条市近傍の岡村断層でトレンチ発掘調査を行なった。5つの小トレンチとそれらを繋ぐ細長い溝で構成される調査トレンチでは, 更新世末から歴史時代までの5つの地層ユニットと, それらの顕著な断層変位が認められた。各ユニットの堆積時期は地層中に含まれる有機物試料の^<14>C年代と土器片の考古学的編年によって決定された。断層は2000年前〜4世紀に堆積したIIIb層を切り, 7世紀以降に堆積したIIIc層に覆われるので最終活動時期は4〜7世紀と推定された。この値は1984年に行なわれた同じ断層の発掘調査結果と一致する。また, これ以外の断層活動時期も地層の不整合や変形構造に基づいて識別された。
著者
斉藤 勝 佃 栄吉 岡田 篤正 古澤 明
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.277-280, 1997-10-31
参考文献数
15
被引用文献数
3 3

和歌山県和歌山市から那賀郡打田町にかけての和泉山脈南麓域には,紀ノ川の支流によって形成された扇状地面が開析され,数段に区分される段丘面が広く分布している.これらの段丘面は,低位段丘(1面,2面),中位段丘(1面,2面)に分類・対比されている(寒川,1977;岡田・寒川,1978;水野ほか,1994).今回の野外調査により,低位段丘2面堆積物中に火山灰層が見いだされたが,この火山灰層は岩石記載学的特徴から,姶良Tn火山灰であることが判明した.姶良Tn火山灰層が挾在することから,和泉山脈南麓域に分布する低位段丘2面は最終氷期極大期頃に形成されたことが判った.<br>低位段丘2面は,中央構造線活断層系に属する根来断層により変位を受けている.根来断層の運動様式は右ずれで,おおむね北側の相対的隆起である.低位段丘2面の離水時期を約2万年とすれば,段丘面や段丘崖の変位量から根来断層の平均変位速度が求められる.これによれば,右ずれは1.8~3.5m/1,000年程度,上下方向は0.3~0.5m/1,000年程度であり,岡田・寒川(1978)が推算した値をほぼ支持する.
著者
上本 進二 大河内 勉 寒川 旭 山崎 晴雄 佃 栄吉 松島 義章
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.41-45, 1993
被引用文献数
1

鎌倉市長谷小路周辺遺跡において, 14世紀前半 (鎌倉時代後期~南北朝時代初期) に由比ヶ浜砂丘地に築かれた半地下式の建物の跡から, 13世紀から14世紀前半頃 (鎌倉時代初期~南北朝時代初期) 形成されたと考えられる噴砂の跡を検出した. 噴砂は砂層に含まれていた土器を巻き込んで約1m上昇して, 当時の地表に噴出している. また, 噴砂の流出と並行して16cmの落差を伴う地割れも形成されている. この噴砂は『吾妻鏡』や『北条九代記』に見られる地震記録から, 1257年 (正嘉元年) あるいは1293年 (永仁元年) の地震によって形成されたと思われる. とくに1257年の地震では, 鎌倉の各地で噴砂が発生した記録が『吾妻鏡』にあるので, 1257年の地震による噴砂と考えるのが適当であろう.
著者
佃 栄吉
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.40, pp.p235-250, 1992-12
被引用文献数
5

西南日本弧を大地形および要素的活構造の特徴をもとに, 南より 1) 陸側海溝斜面帯, 2) 前弧海盆帯, 3) 四国帯(前弧隆起帯), 4) 瀬戸内(剪断)帯, 5) 中国帯, 6) 山陰帯, の島弧にほぼ平行に配列する6つの構造帯に分割した。四国帯には剣山背斜, 紀伊向斜など, 帯に平行な方向の圧縮の結果と考えられる南北軸の構造が卓越する。MTLの北側の幅80~100 kmの瀬戸内帯は顕著な右ずれ剪断運動を示す構造が発達し, 中部九州の雁行地溝群分布域まで連続する。西南日本弧の活構造を形成する基本的メカニズムは, フィリピン海プレートの斜め沈み込みを原因とする前弧海盆帯および四国帯からなる前弧スリバーの西進運動である。前弧と背弧の境界であるMTLの右ずれ運動および瀬戸内帯の右ずれ剪断運動もそれで説明できる。南九州南方ではトラフ軸・島弧の屈曲にともない, プレート間収束方向がプレート境界に対してほぼ直交するために, 前弧スリバーを西進させる力がなくなる。その結果, 前弧の"追突現象"が起き, 四国帯の南北軸の圧縮構造が形成されたと考えられる。
著者
佃 栄吉 粟田 泰夫 吉岡 敏和 EMRE Omer DUMAN Tamer Yigit KUSCU Ismail
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.105, no.11, pp.XXI-XXII, 1999-11-15

1999年8月17日の未明に発生したマグニチュード 7.4(米国地質調査所による)のイズミット(Ismit)地震は, トルコ北西部一帯に大きな被害をもたらし, 死者は1万7千人以上(10月14日現在, トルコ危機管理センターによる)に達した. この地震は北アナトリア断層の活動により引き起こされたもので, 被害の分布もおおよそそれに沿って東西に広がっている. 筆者らは9月14日より現地に入り, 地震後のトルコ鉱物資源調査開発総局(MTA)の調査結果をもとに, 陸域に出現した地震断層(約100km)の約60地点で, 断層運動による変位量を正確に計測した. 調査にあたっては最新の2万5千分の1の地形図と地震後に撮影された約1万分の1の航空写真を使用した. その結果, 今回の地震では走向, 変位量分布, 長さがそれぞれ異なる大小7つの断層が活動したこと(Fig. 2), 右ずれ変位が卓越し, その最大変位量は4. 9mであることなどが明らかになった. イズミット湾やサパンジャ(Sapanca)湖域の地震断層については今のところ情報がないが, 今後の陸域の詳細調査と併せて水域の調査を実施し, 地震断層の全体像を明らかにしたいと考えている. 結果は大縮尺の地震断層図として公表することにしている. この地震断層の詳細な記録は断層のセグメント構造に関する研究においてきわめて重要な情報となる. また, トルコにおいては将来の土地利用計画のための基礎資料として利活用されるものと期待している. ここでは今回の緊急現地調査で観察した地表地震断層の一部について紹介する.