著者
井上 雄三 FAN Bin
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

石油や埋立地汚水漏洩による地下帯水層のオンサイト修復を模擬したベンチスケール実験装置(電極材料:ステンレス製タワシ)を作成した。本装置は透過性反応型地中壁(PRB)の原理を発展させた透過性電気生成反応型地中壁(e-PRB)であり、近年、米国にて発見された微生物の嫌気性代謝の一つ(電子受容体として陰電極を用いて微生物が有機物質を酸化)である。電子は電流として陽電極に伝達され、そこで酸素が還元される。開発中のe-PRBは、透過性反応壁としての地中バイオフィルム(陰極)、地下水以浅の酸素還元(陽極)、電気とイオン移動回路の3つから構成される。通常は最終電子受容体として大気中の酸素を地下水に供給するが、酸素の溶解は効率的でなく、従来のPRB技術では高コストが懸念されている。E-PRBは酸素を地下水中に溶解の必要がないため、経済的で効率的な地下水浄化技術となる。有機汚濁物質としてグルコース、石油系汚染物質としてBTEX(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン)をモデル汚染物質として浄化実験を行い、本装置が長期間(約4ケ月)にわたり安定した電極出力分解反応を継続できることを実験的に明らかにし、e-PRB技術が地下水汚染現場に適用可能なことを示した。本反応の電気出力は、グルコースでは有機炭素濃度が5〜20mg/Lの範囲で電流値4mA、電位差(陽極:0.39V,陰極:0.19V)となった。これは、本プロセスの浄化能力が、量論的に0.2kg-有機炭素/(m3・日)と非常に大きな有機物分解速度となることを示すものであり、オンサイト浄化技術としての能力が非常に高いと判断できる。一方、BTEXでは2mA程度になり、電極活性に阻害が生じないことは示されたが、BTXの具体的な分解能力は評価することができなかった。