著者
五箇 公一 立田 晴記 今藤 夏子 国武 陽子
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

日本産およびアジア諸国産のヒラタクワガタ地域系統の系統関係がミトコンドリアDNA分析によって明らかにされ、アジアの大陸分化プロセスにあわせてヒラタクワガタ地域系統の種分化が進行したことが示された。交雑実験により、ヒラタクワガタ系統間の交雑は遺伝的距離が大きいほど交雑和合性が高い傾向が示された。楕円フーリエ解析による大顎形態分析の結果、雑種個体雄成虫は親系統雄の形態とは異なる大顎形態を示すが、雌親系統の形態的特徴が強く示される傾向があることが示され、ヒラタクワガタの大顎形態には母性効果があることが判明した。生殖操作に関与するWolbachiaの感染は、調査した個体すべてから検出はされなかった。
著者
上田 佳代
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、黄砂の健康に対する急性影響を評価するために、長崎において、越境汚染の指標である黄砂飛来と救急外来受診との関連について明らかにすることを目的とした。予備調査として、文献レビューおよび、福岡における呼吸器疾患のデータを用いた解析を行い、それらの結果を論文として学術雑誌に投稿した。文献レビューにおいては、黄砂の健康影響に関するエビデンスが十分でなく、今後の課題として論じた。本調査として、平成22年度には、長崎市救急実態調査の救急搬送データ、長崎市内の5か所から得た大気汚染物質濃度データ、を用いた解析を行ったところ、SPM濃度上昇により、呼吸器疾患による救急搬送との間に有意な正の関連を認めた。一方、黄砂の健康影響評価にあたり、黄砂日について異なる指標を用いた解析を行った。目視による黄砂判定を用いた解析では、救急搬送の前日、2日前、3日前が黄砂日であった場合のリスクは上昇し、救急搬送当日から3日前までの間いずれかの日に黄砂日があった場合の救急搬送リスク変化率は、4.3%(95%CI : -0.7,9.5)であった。ライダー観測による黄砂消散係数に基づいて判定された黄砂日における救急搬送リスクを評価するために、高度120mにおける黄砂消散係数の値が閾値(0.13/km)を越えた日を黄砂日とし、非黄砂日に比較した黄砂日の救急搬送リスクの変化率を算出したところ、黄砂曝露による救急リスクは10.2%(95%CI : 0.6,20.6)上昇したことを見出し、黄砂消散係数を用いた黄砂判定による健康影響評価の有用性を明らかにした。さらに、後方流跡線解析の結果により黄砂日を分類し、救急搬送リスクの大きさについて比較したところ、工業地帯を通過した黄砂粒子の曝露により、救急搬送リスクが上昇する可能性を示した。
著者
松崎 慎一郎
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

在来ナマズ属3種の地域集団および遺伝的構造を明らかにするために、日本全国およびアジア諸国からナマズ類を採集し、ミトコンドリアDNA調節領域の塩基配列に基づく系統地理解析を行った。ビワコオオナマズでは1集団(琵琶湖)、イワトコナマズでは2集団、ナマズでは3つの大きく分化した地域集団が国内に存在することが明らかとなった。イワトコナマズについては、これまで琵琶湖固有種とされてきたが、近畿・中部地方に別の地域集団が存在することが分かった。また、次世代シーケンサーを用いてマイクロサテライトマーカーを開発し、遺伝的多様性の評価が可能となった。
著者
荒波 一史
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

昨年度に引き続き、英国との共同研究を行った。まずは、殺菌剤のトリクロサンが、紫外線照射下で脱塩素化して二塩化ダイオキシンになることに着目し、純水と淡水と海水を用いて、人工光照射下での光分解実験を行った。その結果、純水中のトリクロサンはほとんど分解せず、淡水に比べて海水中のトリクロサンの方がほぼ倍の速さで分解した。これは、環境水中に含まれる有機物や塩類が、トリクロサンの光分解を促進していることを示唆する。特に塩類の効果に関しては、本研究で初めて示された。一方で、ダイオキシンは海水中で残存しやすいことが示唆された。次に、揮発性および残留性有機化合物における、炭素と塩素の安定同位体比(13Cと37Cl)および炭素の放射性同位体比(14C)に関する文献を集め、個別化合物おける各種同位体比の測定法、起源推定における適用例をレビューした。その結果、新しい炭素が含まれる生物起源炭素と古い炭素が含まれる人為起源(化石燃料起源)炭素を識別できる14Cが、最良の起源推定ツールとして示された。一方で、13Cと37Clに関しては、環境動態(同位体分別効果)を調べるツールとしての可能性が示された。そこで、英国沿岸で採取した汚染底質の抽出試料を分画し、Natural Environment Research Councilに13C測定を依頼し、14C測定のためにプリマス大学で分取型GCを用いて分取濃縮した。また、国際学会では「バイオアッセイを用いた廃油中PCBの簡易分析法の開発」と「トリクロサンの光分解」を発表した。閉会式では、注目すべき研究として、後者の研究が紹介された。
著者
古山 昭子
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

温室内で生育中の2種類の木性シダから放出される塩化メチルをバッグエンクロージャ法によって測定した結果、ヒカゲヘゴからの塩化メチル放出量は日中に減少し、クロヘゴからの放出量は日中に増加することが明らかとなった。さらに、大型チャンバーと低温濃縮/GC/MSから構成される放出量自動測定システムを開発して、塩化メチル放出量の連続観測を行ったところ、両者とも放出量は日中に低下した。気温の変化に対してクロヘゴは正の応答を示し、ヒカゲヘゴは負の応答を示した。1)ラット由来の肺胞上皮細胞と肺毛細血管内皮細胞を用い、基底膜を有する正常肺胞壁を模した2〜0.5μm厚の培養組織の作製に成功した。この培養系に粒径20nmと200nmの蛍光標識されたポリスチレン粒子と金コロイド粒子を培養組織に添加して、粒子の動態・通過機構・認識機構を検討した。A)細胞間の結合部ではなく細胞に取り込まれた20nm粒子がわずかではあるが細胞層を通過するが200nm粒子は通過しなかった。B)200nm粒子はphagocytosisで、20mm粒子はpinocytosisで細胞に取り込まれ、核やミトコンドリアへの移行はなかった。C)カーボンナノチューブは凝集が激しく単粒子で曝露して毒性評価することは困難であった。細胞内シグナル伝達分子の活性化としてNF-κBの核移行と、サイトカイン(IL-1b、TNF)の分泌は検出されなかった。MAP kinaseのリン酸化がナノナノチュいブ添加で検出されたが、毒性の弱い20nm粒子では弱かった。2)マウスに気管内投与した20nmと200nm金粒子は、主にマクロファージに貪食され、ごくわずか20nm粒子は粒子単独で循環系に入り体内移行することが形態的及びICP-MSで示された。3)マウスにカーボン、フラーレン、カーボンナノチューブ、二酸化チタンを気管内投与し、肺への影響を検討した。組織染色ではNF-κBの核移行は検出されず、サイトカイン(IL-1β、TF-α、TGF-β)は50μgのカーボンナノチューブ投与でわずかに分泌が亢進していた。50μgと10μgのカーボンナノチューブ投与で肺の炎症、肉芽腫、部分的な線維化が認められ、ニッケル含量の多いシングルウォールのカーボンナノチューブで影響が強かった。カーボンナノチューブは肺胞マクロファージに貪食されていたが一部上皮細胞に刺さっている像も観察された。
著者
堀口 敏宏 太田 康彦 森下 文浩 井口 泰泉
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

イボニシから脊椎動物のRARとアミノ酸配列の相同性が比較的高いRAR様配列(イボニシRAR)が単離された。All-trans レチノイン酸(ATRA)添加時のウエスタンブロットにより、イボニシRARタンパクは発現したが、転写活性は誘導されなかった。イボニシRARとヒトRARαのリガンド結合部位を融合させATRA, 9-cis レチノイン酸, 13-cis レチノイン酸, All-trans レチノール添加時でもイボニシRARの転写活性は誘導されず、イボニシRARのDNA結合部位をヒトRARαリガンド結合部位と融合させると転写活性が誘導された。イボニシRARとRXRは相互作用すると考えられた。
著者
武内 章記
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

地球規模の水銀汚染対策として、火山や熱水活動によって排出される自然由来の水銀と、人間活動によって排出される人為起源水銀とを識別することができるトレーサーの開発を目指した。本研究では、還元気化装置と多重検出器型誘導結合プラズマ質量分析装置を用いて、魚類中の極僅かな自然界の水銀同位体比変動を計測する分析方法を開発し、魚類中の水銀同位体比に非質量依存同位体分別の影響が検出されて、底質や岩石などに含有されている水銀とは異なる同位体比組成をもっている事を明らかにした。
著者
一ノ瀬 俊明 LIKHVAR Victoria ビクトリア リグバル
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

AndroidにCO2濃度等のセンサーを組み込み、リアルタイムに計測データを位置情報、時刻情報とともにサーバーに集約する、ポータブル型環境モニタリングシステムを開発し、ラグランジュ的環境モニタリングの実施をつくばと東京で行った結果、大気汚染現象の局地性がきわめて高いことが具体的な時空間情報として示された。また、送信された被験者の暴露情報と健康情報を組み合わせることにより、リアルタイムのリスク診断が可能となった。
著者
横内 陽子 橋本 伸哉 伊藤 伸哉 大木 淳之
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

海洋から大気中に放出されるハロカーボンについてグローバルな大気観測および北西太平洋と南北インド洋における海水中ハロカーボン連続観測によってそれらの分布と変動を明らかにした。また、植物プランクトンの培養実験により、ハロカーボンがクリプト藻やラン藻の培養後期(減少期)に生成されることを示し、さらに、海産性微細藻類の生物学的なヨウ化メチルの生成機構がハライドイオン・チオールメチルトランスフェラーゼ(HTMT)反応に起因することを明らかにすると共に遺伝子の単離にも成功した。
著者
一ノ瀬 俊明 白 迎玖 泉 岳樹 三上 岳彦
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

2006年まで4年間の8月中旬に、復元河道近傍および河道より100m以内の5地点で、集中的な移動・定点観測による体感温熱指標SET^*の観測(温・湿度、風速、天空放射、地物表面温度)を行った。また、サーモカメラによる地物表面温度の観測、シンチロメーターによる上向き顕熱フラックスの観測、ソウル市政府が観測している大気汚染物質濃度の時系列解析などを行ってきた。CFDモデルによる数値シミュレーションからは、復元河道上を吹走する冷気が渦を巻きながら、河道に直交する街路へ南北同時に侵入する様子が計算された。2006年夏季に超音波風向・風速計などによる集中気象観測を行った結果では、河道上および河道南側80m付近で清渓川に沿った西風(海風)の強・弱に対応して、気温の下降・上昇が見られ、河川から周辺地域への冷却効果のプロセスが実証された。そこで2007年夏季の集中気象観測では、冷気の川面から周辺市街地へ輸送されるプロセスに関して、その発生源である河道内の気象学的なメカニズムを検証することを目的として、河川真中と南北川岸において、ポールを立て、鉛直(高さ別)に気温や湿度の測定を行った。清渓川の河川水による冷却効果については、川面に近い高度ほど気温が低く、水蒸気密度(絶対湿度)が大きい傾向が見られた。また、南側の鉛直分布に関しては、北側より相対的に気温が低い傾向が見られた。また地表面に近いほど気温が低くなっている傾向が見られた。一方、北側では日中地表面に近いほど気温が高くなっているのがしばしば観測されている。それらの要因としては南側沿道の地表面には植物が繁茂しているのに対し、北側の地表面はコンクリート面がむき出しになっていることが考えられる。以上の結果から南側河岸の方に冷気層が形成されている可能性が示唆された。
著者
永島 達也
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

先行研究で用いられている、比較的簡便で使用する数値モデルに適した手法を選定し、炭素性エアロゾルの内部混合過程が考慮できるように気候モデルを改変した。この改変により、炭素性エアロゾルによる放射の吸収・散乱過程が変更されるとともに、これまでの使用していたモデルに比べて、煤粒子の雲粒への取り込みや雨滴としての消失が強化されるようになった。このモデルを用いて、幾つかのテスト実験を行って実験用パラメータの妥当性を評価した後に、産業革命前(1850年付近)を想定した外部境界条件の下で1000年の長期実験を行い、気候ドリフトの無い安定した基本状態を得た。その後、上記1000年実験のデータから100年間隔で4つ取り出された初期値を用いた、4メンバーの20世紀再現アンサンブル実験、及び同初期値を用いたやはり4メンバーの感度実験を行った。感度実験は、エアロゾル(或いはエアロゾル前駆物質)の地表放出量を、(1)全てのエアロゾル種に関して1850年値に固定して20世紀中の増加を考慮しない、(2)炭素性のエアロゾルに関して1850年値に固定して20世紀中の増加を考慮しない、の2ケースについて行った。また、エアロゾルによる放射強制力を評価するための実験も当初の計画に追加して行った。初期的な解析によれば、20世紀全体で評価した場合、全球平均した地表面気温の長期的なトレンドの再現性は、炭素性エアロゾルの内部混合を慮しいな場合と遜色ないが、20世紀中盤の気温寒冷化傾向はより過大に評価された。これは、内部混合を考慮することによって日傘効果が増す一方で、大気を暖める事によって二次的に地表面を温める効果はあまり大きくない事を示唆するが、準直接効果による雲場への影響などは今後の解析課題となった。
著者
塩竃 秀夫
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

地球温暖化が進むことで、極端な気象現象(以下極端現象)が大きく変化することが、大気海洋結合モデルを用いて予測されている。しかし、これまではモデルが現実の極端現象を精度良く再現しているかどうかは、十分に検証されてこなかった。本研究では、モデルの計算結果と観測データを比較することでモデルの検証を行う。また精度を検証されたモデルを用いて将来予測を行う。H18年度は、モデルで計算された20世紀中の極端現象の頻度分布変化が、観測を再現できているかどうかを、最新の統計分析手法を用いて全球規模で検証し、さらに過去の変動の要因推定を行った。この際、英国ハドレーセンターの協力を得た。これらの成果をふまえ、H19年度は、今後30年間の近未来予測を行った。まず極端な気温現象(夏期または冬期における極端に暑い昼・夜または寒い昼・夜)の発生頻度の変化について調べた。2011〜2030年平均の極端現象の発生頻度分布を1951〜1970年平均のそれと比較すると、陸上のほとんどの地域で、温暖化シグナルは内部変動を凌駕することがわかった。つまり数十年規模内部変動の位相にかかわらず、暑い昼・夜が増加し、寒い昼・夜が減少することが示された。さらに「年平均降水量」と「年間で4番目に多い日降水量(極端な降水)」がどのように変化するかを調べた。高緯度と熱帯では、数十年規模の内部変動の位相によらず、降水量の増加が予測された。一方、亜熱帯では、内部変動の位相によって降水量変化の符号が変わり得ることが示された。温暖化シグナルと内部変動の大きさの比が地域によって異なる原因も調べた。
著者
井上 雄三 FAN Bin
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

石油や埋立地汚水漏洩による地下帯水層のオンサイト修復を模擬したベンチスケール実験装置(電極材料:ステンレス製タワシ)を作成した。本装置は透過性反応型地中壁(PRB)の原理を発展させた透過性電気生成反応型地中壁(e-PRB)であり、近年、米国にて発見された微生物の嫌気性代謝の一つ(電子受容体として陰電極を用いて微生物が有機物質を酸化)である。電子は電流として陽電極に伝達され、そこで酸素が還元される。開発中のe-PRBは、透過性反応壁としての地中バイオフィルム(陰極)、地下水以浅の酸素還元(陽極)、電気とイオン移動回路の3つから構成される。通常は最終電子受容体として大気中の酸素を地下水に供給するが、酸素の溶解は効率的でなく、従来のPRB技術では高コストが懸念されている。E-PRBは酸素を地下水中に溶解の必要がないため、経済的で効率的な地下水浄化技術となる。有機汚濁物質としてグルコース、石油系汚染物質としてBTEX(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン)をモデル汚染物質として浄化実験を行い、本装置が長期間(約4ケ月)にわたり安定した電極出力分解反応を継続できることを実験的に明らかにし、e-PRB技術が地下水汚染現場に適用可能なことを示した。本反応の電気出力は、グルコースでは有機炭素濃度が5〜20mg/Lの範囲で電流値4mA、電位差(陽極:0.39V,陰極:0.19V)となった。これは、本プロセスの浄化能力が、量論的に0.2kg-有機炭素/(m3・日)と非常に大きな有機物分解速度となることを示すものであり、オンサイト浄化技術としての能力が非常に高いと判断できる。一方、BTEXでは2mA程度になり、電極活性に阻害が生じないことは示されたが、BTXの具体的な分解能力は評価することができなかった。
著者
一ノ瀬 俊明 花木 啓祐 泉 岳樹 陳 宏
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

華中科技大学と共同で、中国・湖北省・武漢市の長江両岸地区(武昌と漢口)において再開発が想定される地域を対象に、夏季と冬季の集中気象観測、ならびに街区スケールの気流等に関する数値計算を行った。観測からは、河道上の風速が強まるのと連動し、直交する街路上の風速が強まり、同期して気温の変動が生じていることが示された。また、気象観測や数値計算の結果にもとづき、ヒートアイランド緩和策を盛り込んだ市街地の整備プランを提案した。
著者
堀口 敏宏 太田 康彦 井口 泰泉 森下 文浩
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

イボニシ(Thais clavigera)を中心に、RXRに関する生物学的特徴と、ペニス及び輸精管の分化・成長・形態形成との関係を解析した。イボニシRXRには2つのアイソフォームが存在し、両者で転写活性能が異なること、並びに9-cisレチノイン酸(9cRA)、トリブチルスズ(TBT)及びトリフェニルスズ(TPT)により転写活性の誘導がみられることなどを明らかにした。イボニシとバイ(Babylonia japonica)における生殖腺の分化及び生殖輸管の発達を組織学的に調べ、明らかにした。イボニシの神経ペプチドに関する基礎知見を得た。イボニシとバイにおける脊椎動物様ステロイドの検出を試みるとともに、ステロイド受容体が見出されないこと、アロマターゼ阻害剤とテストステロンでインポセックスの発症・増進が見られないことを明らかにした。
著者
石原 光則
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,衛星データを用いた陸域植生による炭素吸収量推定手法を高精度化することを目的に,地上で観測された分光反射率データ,二酸化炭素フラックスデータ,衛星データを用いて検証を行った。その結果,MODIS(Moderate Resolution Imaging Spectroradiometer)データを用いて,光化学反射指数(Photochemical Reflectance Index, PRI)の算出が可能であり,この指標から光利用効率(Light Use Efficiency, LUE)を推定して用いることにより,衛星データを利用した陸域植生の純一次生産量広域推定の高精度化が可能であることが明らかとなった。
著者
野原 精一 広木 幹也 井上 智美
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

島嶼における河川水や地下水の物質輸送が,どの程度沿岸域に影響をおよぼすのかを評価することを目的として,東京都小笠原諸島と八丈島および伊豆大島の島嶼で,1997年~1999年及び2005~2008年に陸水及ひ、海水の採水.i海藻の調査を行った。小笠原父島や母島の河川水の栄養塩環境は夏期に低く,冬期に高い季節変化が見られた。伊豆の島岨の地下水の硝酸態窒素は高い濃度にあり,沿岸域の海藻の重要な窒素源となっているが,近年の生活形態や農業による水需要の変化によって,陸からの沿岸域への陸水供給減少に伴う栄養塩供給の減少と考えられた。海藻のi515N値から陸水の栄養塩の影響を受け沿岸域の富栄養化が時代とともに進んで、きたと推定された。その影響は伊豆大島,八丈島,小笠原と本州から離れるにつれて小さくなってきていた。近年の伊豆大島,八丈島の海藻のi5 15N値の低下は,陸からの陸水の栄養塩類供給が減少してきていることを示唆した。
著者
岩根 泰蔵
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

国内河川および下水における医薬品物質の動態把握のため、これまで都内を対象に調査を進めてきた。その結果、下水処理場からの放流水が主要な負荷源であると推測されたため、本年度は多摩川流域の下水処理場を対象としてその汚染要因を究明すべく下水幹線試料も含めた詳細調査を実施した。試料は、東京都青梅市および瑞穂町からの下水幹線試料(13地点)と下水採水地域を管轄する下水処理場の流入水ならびに放流水(各12試料)を用いた。測定対象はカルバマゼピン(CBZ)、エリスロマイシン(EM)、クラリスロマイシン(CAM)、インドメタシン(IMD)、メフェナム酸(MEF)、イフェンプロジル(IFP)、ベンザルコニウム(BAC)、オフロキサシン(OFLX)の8物質である。調査の結果、これら8物質は下水処理場の流入水および放流水の全試料から検出された。下水処理場の流入水では、OFLX(幾何平均値580ng/L)、CAM(530ng/L)、BAC(350ng/L)、EM(280ng/L)が主要成分であり、放流水ではCAM(390ng/L)、OFLX(250ng/L)、EM(200ng/L)が顕著であった。BACの放流水中濃度は17ng/Lと流入水に比べて1桁低く、OFLX、MEFに関しても下水処理前後で有意差(1%)が確認された。下水幹線試料においては測定対象物質の各濃度に変動があったが、いずれの地点においてもBACは高濃度(240〜16000ng/L)で検出された。BACは殺菌消毒剤(逆性石鹸の成分)であり家庭からの寄与は想定し難く医療機関での使用が中心と考えられる。調査区域は都内でも様々な医療施設が集中していることから、これらの施設からの環境負荷も予測された。
著者
野原 精一 広木 幹也
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

水循環機能と微生物の分解機能からモニタリングを行い、自然の干潟・湿地である盤洲干潟・小櫃川河口湿地の比較し、事業規模でより現実的な自然再生の事業評価手法を開発することを目的とした。本研究では、小櫃川河口干潟における現存の相勘植生図を過去の資料及び航空写真から判読した地形変化と比較しながら、植生変化及びその要因について検討した.1974年、1984年、2001年の相勘植生図を比較した結果、後背湿地全体の面積は1974年で24.89ha、1984年で29.18ha、2001年で29.29haと拡大した.1974年、1984年、2001年の各植生タイプの面積を比較した結果、塩湿地植物群落ではシオクグ群落、ハママツナ群落、ヨシ群落などの満潮時冠水型は縮小し、アイアシ群落の満潮時非冠水型は拡大した.コウボウシバ群落、ハマヒルガオ群落などの砂丘地植物群落、チガヤ群落、オギ群落などの草原性植物群落、テリハノイバラ群落、アズマネザサ群落などの木本類群落は縮小した.(景観生態学9(2):27-32,2005)沿岸帯の2つの典型的な沿岸帯である砂質浜および塩生湿地において二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素の放出速度を2003年夏に測定した。地球温暖化ガスの純放出量の定量的把握と2地点でのガス放出量の変動に関与する重要因子を明らかにする目的で実施した。二酸化炭素とメタンの放出量の大きさや変動は2地点でことなっており、塩生湿地より砂質浜で低かった。亜酸化窒素の放出の大きさと変動は2地点で類似していた。砂質浜での温暖化ガス放出の時空間的な変動は潮の干満による水位変動により強く支配されていた。塩生湿地では3種類のガスの空間的変動は地上部現存量と関係しており、二酸化炭素とメタン放出量の時間的な変動は土壌温度に相関が高かった。観測した温暖化ガス放出量から推定した塩性湿地における地球温暖化ポテンシャルの合計は砂質浜に比べて約174倍高かった。(Chemosphere68:597-603,2007)