著者
水野 りか 松井 孝雄 Francis S. BELLEZZA
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-10, 2007-08-31 (Released:2010-09-29)
参考文献数
15
被引用文献数
5 5

本研究は,表音文字処理における形態・音韻コードへの依存度の英語母語者と日本語母語者の違いを調べることを目的とした.実験1では,Posner,Boies,Eichelman,& Taylor (1969)の文字マッチング実験を手続き上の諸問題を解決した上で日米で追試した.その結果,彼らの実験結果とは異なり形態的一致のRTはISIとともに増大せず,日本では形態的一致のRTが音韻的一致のRTより短いが米国では両RTが等しく,日本語母語者は形態的一致の判断に形態コードを用いるが英語母語者は形態コードの代わりに音韻コードを用いる可能性が示された.実験2ではこの可能性を確認するために,音韻コードの利用を抑制する変則マッチング実験を行った.その結果,米国では実験2の形態的一致のRTは実験1より短いが,日本ではそうした傾向が全くないことが見いだされ,表音文字処理における日本語母語者の形態コードへの依存度の高さと英語母語者の音韻コードへの依存度の高さが確認された.