著者
三好 圭 大平 雅美 GOH Ah-Cheng 神應 裕
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.829-833, 2016 (Released:2016-12-22)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

〔目的〕仰臥位用(SE)と自転車(BE)エルゴメーターを用いて姿勢の違いによる筋活動量への影響を検討すること.〔対象と方法〕男子学生11名とした.負荷量は10 W,20 W,30 W,43 W(BEは44 W),75 W(BEは76 W)とした.筋電図より得られる内側広筋,大腿直筋,大腿二頭筋,前脛骨筋,腓腹筋外側頭,ヒラメ筋,脊柱起立筋,腹直筋の最大等尺性随意収縮(MVC)を用いて%MVCを求めた.〔結果〕BE,SEともに負荷量が上がると%MVCも上がる傾向にあった.BEと比較すると前脛骨筋,内側広筋,脊柱起立筋でSEの%MVCの平均が有意に低かった.〔結語〕SEは下肢の筋力増強トレーニングとして利用できる可能性はあるが,筋力低下のある透析患者での検討が必要である.
著者
GOH Ah-Cheng
出版者
Japanese Society of Physical Therapy
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.253-256, 2012-06-20 (Released:2018-08-25)

Van der Vleutenらによると,臨床的推論技術は,治療技術と同様に重要なものだと述べている。臨床的推論プロセスは,起きている問題の原因を特定し,正しい治療目的を設定し,さらに最適な治療技術を施すために重要なものであり,患者に治療を施す前に行われるものである。たとえ優れた技術をもった治療者であっても,適切な臨床的推論技術なしには効果的な治療を患者に行うことはできない。適切な治療技術に関係する事項について述べることは,今回の目的ではない。しかし,よい臨床的推論技術が,治療結果を成功に導く前提条件であるということを認識することは重要である。理学療法士は,専門分野や臨床経験年数の違い,バイオメディカルサイエンスについての知識量により,様々な臨床的推論プロセスが用いられている。これらの要素については,物理療法を例に用いながら述べていく。物理療法の臨床的推論プロセスは,図1に示した。ステップ1では,標的組織にどのような生物物理学的変化をもたらしたいかを決定する。たとえば急性損傷の場合,炎症過程において,熱感,発赤,疼痛,腫脹の4つの兆候がみられる。そのため,急性炎症の治療では,組織を冷やすことが必要となる。ステップ1で他に必要となるのは,生物物理学的変化をもたらすために,最適な物理療法介入がなんであるかを判断することである。今回の例では,寒冷療法(アイスパックやアイスマッサージ)が,損傷組織の温度を下げるためにもっともよく用いられる方法である。ステップ2では,標的組織に対し期待する生理学的効果を決定する。たとえば,組織温度が15℃まで減少した時には,血管収縮が起こり,血流が減少する。一方,組織温度が10℃まで減少するか,寒冷療法を15分以上行うと,血管拡張が起こり,結果として血流が増加する。このようなことから,求める生理学的効果が損傷組織周囲の血流を減少することであれば,寒冷療法は15分以下とし,組織温度の減少は15℃程度とする。ステップ1と2で行われた決定により,ステップ3の臨床効果へと続いて行く。今回の例では,臨床効果は腫脹の減少により得ることができる。今まで述べた臨床的推論と医療判断プロセスは,物理療法を用いたすべての治療法に用いることができる。効果的な治療効果を得るために,理学療法士は臨床場面での臨床的推論と医療判断学の重要性を理解することが必要である。