著者
岡野 八代 菅野 優香 GONON Anne 菊池 恵介
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、1) 理論研究と2) ケアの倫理研究拠点の確立という二つの目的が存在している。2016年度の実績については、1) については、フランスにおいて受容されてきたケアの倫理研究の軌跡を、文献研究を中心にすすめられた。とりわけ、フランスでのケアの倫理研究の導入が、ケアの倫理と政治、そして民主主義論を中心に行われていたことを明らかにできた。また、フランスでも深刻な、ネオ・リベラリズムの席巻による、民主主義的原理の堀くずしなど、ケアの倫理がフランスにおいて注目される政治的文脈も明らかにした。2) 京都とパリ双方において、以下のシンポジウムを開催し、来年度にむけた成果報告の基礎が作られた。2017年3月7・8日、京都同志社大学においては、研究分担者であるアンヌ・ゴノンによって、フランスおよび合衆国のケアの倫理研究者とともに、「ヴァルネラビリティ・身体、そして自己の諸様式」と題されたワークショップが二日間にわたり開催された。大学院生の報告を含め、生と身体の傷つきやすさについて学際的な議論を行った。また、2017年3月13日には、研究代表者岡野八代が滞在するパリ第8大学における「ジェンダー・セクシュアリティ・研究センター」(LEGS)において、日本軍慰安婦問題をめぐる男性中心的な日本政治の現状と歴史認識、そして安全保障観をケアの倫理の観点から批判的に考察するシンポジウムを開催した。グローバルな植民地主義の歴史と、現在まで継続する紛争時の女性に対する暴力、さらにそうした暴力の記憶をどのように継承するか。パリ第8大学からは、Carol Mann 氏からのコメントを受け、日本における事例と日本におけるフェミニズム運動がもつ、現代的な可能性について討論の機会をもつことができた。[see http://legs.cnrs.fr/spip.php?article206]