著者
有田 豊 Gorbunov Oleg G.
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.157-173, 1996
参考文献数
23

タイで得られたスカシバガ科,モモブトスカシバ属Melittia Hubner,[1819]の2新種,M.sukothai sp.nov.とM.bella sp.nov.を記載し,東洋熱帯から知られている3種,M.eurytion(Westwood,1848),M.nepcha Moore,1879およびM.gorochovi Gorbunov,1988をタイから新しく記録した.今までにタイから記録されていたM.siamica Walker,[1865]と合わせてMelittia属は6種類になる.Melittia eurytion(Westwood,1848)(Figs 1-3,9,11-12)個体の大きさは,開張25-34mmとかなり変化がある.前翅中室外方透明紋も大きさや形にかなりの変異がある(Fig.9).食草は不明であるが,成虫は4-5月,7-9月に採集されている.また水銀灯を使った夜間採集の灯に夜明け前に数頭が飛来した.Melittia nepcha Moore,1879(Fig.4)インド(ダージリン),ネパール,北ベトナムから記録があり,今回タイ北部のチェンマイから1♂を初めて記録した.Melittia sukothai sp.nov.(Figs 5,13)本種はややM.newara Moore,1879に似ているが,後脚脛節の長毛の前半がM.newaraでは黄色なのに対して本種では白いことで区別される.食草や生態などは不明である.Melittia bella sp.nov.(Figs 6,14,16)この新種はamboinensisグループに非常によく似ている.前翅中室外方透明紋の形でこのグループのcelebica Le Cerf,1916,meeki Le Cerf,1916およびmarangana Le Cerf,1916と区別される.2♀がタイの低地で採集されているのみである.Melittia gorochovi Gorbunov(Figs 7-8,10,15,17)ベトナムから記載された種であるが,今回タイからも記録された.タイでは8-11月に熱帯林を切り開いた林縁部で採集された.