著者
星野 三喜夫 HOSHINO Mikio
出版者
新潟産業大学附属東アジア経済文化研究所
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.1-16, 2013-02

2012年8月に第3次アーミテージ・ナイ報告書が発表された。同報告書は米共和党、民主党の知日超党派・有識者による米国から日本への真摯な政策提言である。3次報告書は日米関係が漂流する中にあって、日本への叱咤激励と日本「一級国家」論を盛り込んでおり、日本は、本報告書にある熱いメッセージを強く認識すべきである。報告書に示された提言に日本が応えず、日米関係と日米安全保障体制の維持・強化について強い意思を示さなければ、報告書にあるように日本は国際社会において二級国家になり下がってしまう。3次報告書の提言の1つである日本のTPP参加について、日本が、国内の既得権益を守ろうとする組織や団体の圧力に屈し、21世紀の世界秩序を塗り替えるほどの大きな枠組みであるTPPへの参加を躊躇すれば、日本は、国際的なリーダーシップや発言力の低下を免れない。TPPは日米の「特別な関係」の構築にとって重要なツールでありプロセスである。日本はTPPの通商面に加え、政治安全保障上の意義を国際関係の中で正確に捉え、早急にこれに参加すべきであり、それが世界第3位の日本の東アジアとアジア太平洋、そして広く世界に対して果たす責務でもある。
著者
星野 三喜夫 HOSHINO Mikio
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 = Bulletin of Niigata Sangyo University Faculty of Economics (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.48, pp.1-19, 2017-01

フィリピンと中国の南シナ海を巡る係争に関し2016年7月12日に常設仲裁裁判所が出した裁定は、中国の南シナ海域内の資源に対し中国が主張する管轄権や歴史的権利を否定したが、同裁定は常設仲裁裁判所が執行機関を持たないことから「強制力」がない。しかしながら、たとえ「強制力」はないとしても裁定は「最終的」かつ「法的拘束力」を持つ。中国は下された裁定に従う意向を見せず、同海域での動きを活発化させている。裁定は力ではなく法に基づく海洋法秩序の維持という観点から、当事国のみならずすべての国・地域が真摯に受け止めるべきものである。国連海洋法条約により組織された常設仲裁裁判所によって出された裁定を尊重しないということは、中国が国連の加盟国として国際社会で法と秩序を守る責任感を欠如していること、また、国連の常任理事国としての失格がないことを認めたのと同義である。日本及び国際社会は、国連という国際社会の秩序の枠組みと法規範に基づいて決定されたことでであっても、強大な軍事力と経済力を持ってすればこれを無視することもできる、といった誤ったメッセージで既成事実(fait accompli)を形成してしまわないよう、裁定に従わない中国に対し、あらゆる場で協調して対応していく責務がある。今次の裁定は、旧約聖書の羊飼いの少年ダビデが巨漢戦士ゴリアテを倒し勝利した寓話を思い起こさせるが、フィリピン及び周辺国・地域をローマ軍を撃破した古代ギリシャのピュロス王の「割に合わない勝利」に終わらせてはならない。
著者
星野 三喜夫 HOSHINO Mikio
出版者
新潟産業大学附属東アジア経済文化研究所
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.42, pp.1-18, 2013-06

2年半に亘り国内で議論されてきたTPP交渉への日本の参加が確実になった。TPPはアジア太平洋自由貿易圏構築に向けた多国間通商秩序であり、参加が遅れたにしろ、世界経済規模第3位の日本がこのルール作りに加わる意義は大きい。交渉参加に先立つ日米事前合意において途中参加の日本は「参加料」を払わざると得なかったという側面もあり、TPP交渉プロセスにおいて困難が予想され、日本外交の実力が試される。日本はTPPの戦略的重要性や日本のTPP参加の意義を再確認し、確固不抜の戦略と戦術をもって利害や主張が対立するTPP交渉に臨むことが望まれる。