- 著者
-
絹川 ゲニイ
- 出版者
- 新潟産業大学経済学部
- 雑誌
- 新潟産業大学経済学部紀要 = BULLETIN OF NIIGATA SANGYO UNIVERSITY FACULTY OF ECONOMICS (ISSN:13411551)
- 巻号頁・発行日
- no.61, pp.13-24, 2022-06
エネルギーの利用と人類の文明が深い関係にあり,文明の発展と同時に使用するエネルギー源やその量が変わってきた.人間の社会経済活動において,電気エネルギーはもっとも欠かすことのできないものになっており,経済成長に沿ってその使用量が大幅に増え続けた.従来のエネルギー構成では,化石燃料が占める割合が非常に高く,日本の電源構成でも化石燃料は8割以上に上る.化石燃料の大量使用が大気中の二酸化炭素濃度を増加させ,地球温暖化を引き起こすとされている.現在では,地球温暖化への対応として二酸化炭素等の温室効果ガス排出を抑制することが世界規模で共通認識になってきた.経済活動や日常生活に大きな支障が生じるようなエネルギーの利用制限は現実的ではなく,環境保護の観点からエネルギー利用による環境汚染をなるべく低減していく努力が求められている.今後,経済と環境の好循環を作っていくためには,現在のエネルギー構成を変えて,化石エネルギーから非化石へシフトしていくことが鍵になる.非化石エネルギーの中で注目されているものとして水素エネルギーがある.水素をエネルギーとして利用する手段は燃料電池で,家庭用燃料電池,業務・産業用燃料電池,燃料電池自動車などがある.燃料電池では水素と酸素の化学反応を利用して電気をつくるため,生成物は水で,環境に優しく,発電効率も高い.水素エネルギー利用は,一次エネルギーのほとんどを海外の化石燃料に依存する日本のエネルギー供給構造を変え,大幅な低炭素化と政府が掲げる2050年カーボンニュートラル,脱炭素社会の実現に繋がる.