著者
福永 真人 I Sedliarou N Kryshenko
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.79, pp.159-161, 2004-09

1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故後,その周辺地区(特にベラルーシ共和国ゴメリ州)において,小児甲状腺癌のリスクが高まったことが知られている. 一方,放射線後障害としての甲状腺癌の増加の他にも,住民の間におけるいわゆる「放射線恐怖症」が,間接X線撮影による検診率の低下を引き起こし,これによる肺結核の増加が報告され,放射線に対する正しい知識の啓蒙の重要性が指摘されてきている (1). 事故から17年が経過し,住民の放射線に対する認識の変化,あるいは行政サイドの対応により,増加した肺結核が現在までにどのような動向を示しているかを明らかにすることは,チェルノブイリ周辺地区における包括的な健康影響評価のためにも重要である. 以上を踏まえて,本研究では2003年までにおける同地区の結核検診率,発症率の動向を調査したので報告する.