著者
黒田 裕 ISLAM MonirulMohammad ISLAM Monirul Mohammad
出版者
東京農工大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

現在のところワクチンもないデング熱は、東南アジアの広い地域で公衆衛生上の問題となっている。デングウイルスは、DEN1~4の4種類の型に大別され、それらのエピトープ領域とウイルス型に対する抗体の特異性を解明する事は重要な研究課題である。本計画では、抗体認識の特異性に直接関わる可能性が高いデングウイルスのエンベロープ糖タンパク質(以下、Eタンパク質)の第3ドメイン(以下、E3D;96残基)に注目し、その変異体解析を行い、抗体認識機構(及び部位)を分子レベルで解明する。平成23年度では、デングウイルス3型及び4型由来のE3Dを、pET発現系を用いて大腸菌で発現し、通常の精製法(ニッケルレジン、HPLC)で、高純度に精製した(培地1L当たり30mgの収量)。高純度に精製した3型E3D及び4型E3DのX線結晶構造をそれぞれ、1.8Åと2.2Åの分解能で決定し、座標をPDBに仮登録した。さらに、3型E3D、4型E3Dに対するポリクロナル抗体を作製した。また、3型E3D及び4型E3Dの抗体認識部位の数残基を互いに入れ替えた変異体(Epitope Grafted Mutant; EGM)を8種類構築し、大量発現し、精製した。現在、EGM変異体とE3Dを型特異的に識別する抗体の相互作用をElisa法で解析中である。これらの相互作用解析の結果を上記の高分解能X線結晶構造と比較することで、抗体のウイルス型特異性の物理化学的な解明が期待される。