著者
松川 晴美 浦坂 純子 Harumi Matsukawa Junko Urasaka
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Hyoron Shakaikagaku (Social Science Review) (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.143, pp.45-65, 2022-12-31

大学生の約3割が将来についての見通しを持てずにいるという事実から,特に大学入学までの実家の暮らしぶりが,その後のキャリア構想,キャリア実現にもたらす格差について検証することを目的としている。分析のため独自にWEB調査を実施し,4年制大学卒業または博士前期課程を修了後3年以内の男女3,090人から回答を得た。 分析の結果,暮らしぶりは,大学入学時のキャリア構想,キャリア実現の双方に大きく影響を与えていた。また初職就職時では,キャリア構想に対する暮らしぶりの影響は消えるが,キャリア実現には強くその影響が残った。 大学生は,やりたいことを探す力さえも生育環境に左右されている。この点を,現行のキャリア教育は見落としている可能性がある。