- 著者
-
深田 淳太郎
Juntaro Fukada
- 出版者
- 国立民族学博物館
- 雑誌
- 国立民族学博物館研究報告 (ISSN:0385180X)
- 巻号頁・発行日
- vol.38, no.3, pp.377-420, 2014
パプアニューギニア,ラバウルに住むトーライ人はタブと呼ばれる貝殻貨幣を,婚資や賠償の支払い,儀礼での展示等のいわゆる慣習的な威信財としてのみならず,商品売買や税金・授業料の支払いなどの交換媒体としてまで広い目的で使用してきた。このタブの原料となるムシロガイの貝殻はラバウルの近辺では採れず,遠方から輸入されてくるものである。その輸入元はヨーロッパ人との接触があった19 世紀以降,何度かの変遷を経て,現在では隣国であるソロモン諸島の西部地域になっている。本稿ではまず,このラバウルへのムシロガイの輸入が現在までどのように行なわれ,またいかにそのかたちを変えてきたのかについての歴史的経緯を19 世紀末から1970 年代まで文献資料をもとに整理する。その上で1980 年代からのソロモン諸島からの輸入がはじまった経緯および,現在の輸入の具体的な状況について,2009–2011 年に実施した現地調査で収集した資料をもとに明らかにする。