著者
斗内 政吉 KIM S. KIM Sunmi
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

平成20年度は現在までに構築しているレーザーテラヘルツ放射顕微鏡(LTEM)のシステム高機能化をを計るとともに、これを使った半導体デバイスの評価を行った。またこの高機能化したシステムに関する特許の申請を行った。以下に研究結果の詳細を示す。前年度までに従来の試料ステージ移動型のLTEMにビームエクスパンダーおよび固浸レンズを組み込むことにより、波長780nmのフェムト秒レーザー光源を使って、空間分解能として1.2ミクロンを達成していた。また、高速イメージングのためにレーザー走査用のガルバノメータを組み込んだ透過タイプのレーザービーム走査型LTEMを構築し、500×500画素のテラヘルツ放射イメージ取得時間を10秒程度まで短縮することに成功していた(従来の試料ステージ移動型では1時間程度必要)。今年度は、このレーザービーム走査型LTEMを、様々な試料に適応可能な反射型に改良し、またレーザー光源については多くの半導体デバイスのベースとなるシリコンを透過可能な1058nmに変更。さらにビームエクスパンダーおよび固浸レンズを組み込んだシステムへと拡張した。このシステムにより、0.5ミクロンのライン&スペース構造を有するテラヘルツ放射素子を用いて実験を行った。その結果、レーザービームをライン間に照射したときに放射される周期的なテラヘルツ放射パターンが観測されており、よって空間分解能として1ミクロン以下を達成した。また、この新システムを用いて、半導体デバイスの一つであるオペアンプのテラヘルツ放射イメージの観測を行った。人為的に配線に断線箇所を作ったオペアンプと正常なものにおけるLTEMイメージにおいて、有意な差を観測した。このようなテラヘルツイメージの差はアンプに外部から何もバイアス電圧等を入力しない場合にも観測されており、このLTEMを使って半導体デバイスの故障評価を非破壊で高速に行える可能性を示している。