著者
佐々木 全 伊藤 篤司 今野 文龍 SASAKI Zen ITO Atsushi KONNO Ayaru
出版者
岩手大学教育学部
雑誌
岩手大学教育学部研究年報 (ISSN:03677370)
巻号頁・発行日
vol.75, pp.89-102, 2015

近年,子どもたちの健全育成のために,放課後や休日における地域生活の充実の必要性が指摘され,全国各地で多様な取組みがなされている1)2)3).このような活動は,当然ながら障害の有無や障害種を問わないテーマである. しかし,LD,ADHD,アスペルガー障害等いわゆる発達障害の子どもにおいては,既存の活動,例えば学童保育,学習塾,スポーツ少年団などに馴染みにくいことが少なからずあり,その補完的な活動の場が必要だったり,むしろ積極的な適応の場としての活動が必要だったりする.これらの事情に対応して,親の会や専門家グループなどの支援団体が放課後活動や休日活動を企画し提供する実践がある.岩手県内においても,このような支援団体は複数あり,それぞれに療育や訓練,あるいはレジャーや交流という生活自体を目的としている4)5). このような市民団体の活動を巡っては,その実践の意義を検討しようとする「実践論」と,その実践を持続するための運営方法を検討する「運営論」が必要である6)7)8).特にも,「運営論」に関しては,近年,全国各地の親の会等の支援団体における運営上の悩みが顕在化しており,重要視される9)10)11).岩手県内でも,いくつかの支援団体において,持続不能状態に陥ったり,過重な努力によってようやく持続したりしている状況が散見される.それゆえ,持続可能な運営に関する知見を相互参照可能な情報として共有することが役に立つだろう.本稿は,その一環として「実践論」と「運営論」を包括的に検討する事例研究である.具体的には,放課後活動「Act.(アクト)」を事例として,その実践の意義と,持続可能な運営のために施した工夫点を明らかにすることを目的とする.