- 著者
-
松沢 佑次
PARK Y.B.
KOSTNER G.M
FUJIMOTO W.Y
山下 静也
KYUNG Y.B.Park
KOSTNER G.M.
- 出版者
- 大阪大学
- 雑誌
- 国際学術研究
- 巻号頁・発行日
- 1996
最近、動脈硬化の最も大きな基盤である脂質代謝異常に人種的・地域的な特徴が存在することが明らかになった。本研究では、コレステロールエステル転送蛋白(CETP)の遺伝子異常と、LDL受容体の遺伝子異常の各タイプ別頻度を国内外で調査し、動脈硬化の国別の遺伝子基盤の相違を明らかにするために以下の検討をした。1.CETP欠損症CETP欠損症の変異は従来6種発見されているが、この中で比較的頻度が高いことが推察されるイントロン14の異常(IN14)及びエクソン14変異(EX15)を中心とする4変異について検討した。CETP欠損症の遺伝子異常としては、6種類発見されているが、IN14とEX15が大部分を占め、G181X変異も頻度は少ないながら、共通変異であった。IN14のホモ接合体は、全例がHDL-C100mg/dl以上を呈し、EX15のホモ接合体ではこれより低値を示す例が多かった。また、CETP遺伝子変異を有しても、HDL-C値が正常のものもあった。これに対して、国外ではCETP欠損症の頻度は極めて少なかった。日系米人の調査では、HDL-Cが90mg/dl以上のものが計27人あり、その中で、EX15のヘテロ接合体が4人、EX15とIN14の複合ヘテロ接合体が1人発見された。また、韓国においても日本人の共通変異が2種見出された。日系米人でも変異は日本人と共通していた。また、ドイツ人の高HDL血症例で新たな変異が見出され、これは日本人には存在しない変異であった。一方、米国及び欧州ではCETP活性の正常な高HDL血症例が存在し、そのリポ蛋白像はCETP欠損症と異なり、CETP欠損症以外の成因による高HDL血症の存在が示唆された。2.LDL受容体異常(家族性高コレステロール血症、FH)LDL受容体異常に関しては、我が国での遺伝子異常として見つかっているものには、約26種類の変異があったが、この中5つは共通変異で、日本人のFHの約1/3がこれらの変異で説明できた。これらの共通は日本全国で分布し、特定の地域への集積は認められていない。一方、欧米のFHではわが国で見出された変異は見つかっておらず、日本人の起源を推定する上で、アジア地区にも対象を広げて解析する必要がある。