著者
黒須 正明 KUROSU1 Masaaki
雑誌
放送大学研究年報 = Journal of the Open University of Japan (ISSN:09114505)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.93-109, 2013-03-21

ユーザエクスペリエンスという概念は今世紀、特に2000年代の後半から現在に至って、これまでユーザビリティに関する活動を行ってきた人々だけでなく、マーケティング関係者や営業関係者など、企業活動を例にとればより広範な関係者に利用されるようになってきた。大学等では、この概念は学生満足度として検討の対象になるため、従来のものづくり関係者だけではない広がりを見せている。しかし、概念定義の標準がないため、単なるセールストークになってしまっている側面もある。そうした状況のなか、特に欧州の関係者は概念定義について議論することが多く、その中から感性的側面を重視する見方がでてきた。それに対し、アメリカはどちらかというと、使えるものなら何でも使って売り上げアップを図ろうという傾向で、概念規定は後からやろうとする傾向がある。ともかく、そうした動きのなかで、従来の中心的概念であったユーザビリティは、品質特性の一部として重視されつつも、それに加えて感性的側面を重視する傾向が強くなっている。本論では筆者が主張している意味性を加えた三つの特性からユーザエクスペリエンスを論じるが、その中でも特に感性情報処理に焦点化して感情と認知の関係などにつき、論述を行った。