著者
中野有紀子 塚原 渉 中川 正樹 黒須 正明
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.1242-1250, 2007-11-15
被引用文献数
1

利用者の視点に立ったより使いやすい製品を開発するには,ヒューマン・コンピュータ・インタラクション(HCI)の専門家からの視点が重要だといわれている.このような状況の中,企画段階から開発プロジェクトに参加し,さまざまな専門分野の人たちと協調してプロジェクトを推進できるHCI専門家の養成が求められている.本稿では,日本におけるHCI教育のさらなる改善に役立つ情報を提供することを目的とし,2006年にアメリカの4大学とヨーロッパの2大学のHCI教育を視察した内容をまとめ,各大学のカリキュラムの特徴,実践的教育を中心に解説する.
著者
黒須 正明 Masaaki Kurosu
雑誌
放送大学研究年報 = Journal of The Open University of Japan (ISSN:09114505)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.97-107, 2016-03-25

人工物は様々な形で進化してきたし、今後も進化すると考えられるが、その過程において重要なのは意味性、すなわち、当該人工物が目標達成にとって有意味であるかどうかという基準である。その有意味性を確立する上で、客観的品質特性と主観的品質特性の双方が重要な役割を果たすが、特に主観的品質特性において審美性は重要な要素といえる。本論では後半、審美性という品質特性に焦点をあて、人工物のなかでも食具、さらには箸の取り扱い方に注目し、その進化のプロセスにおける審美性の在り方について論じた。
著者
佐久間 泰司 百田 義弘 黒須 正明
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.488-497, 2018-06-30 (Released:2018-06-30)
参考文献数
14

目的:一般市民も使用するAEDは,ユーザビリティに配慮すべきである。一般市民に近いと考えられる歯科衛生士専門学校生徒を対象に,AEDのユーザビリティを調査した。方法:参加者に「私が胸を押すので,あなたはAEDを操作してください」と促し,参加者がAEDを操作しショックを行う過程を観察した。その後90分の救急講習を行い,再度,同じ実験を行い比較検討した。6種類(A〜F)のAEDトレーナーを用いた。結果:AEDの蓋の開け方がわからず迷った参加者が,蓋を開けるタイプのAEDを用いた21名中8名いた。AEDの使用を促されてからAEDが心電図解析を始めるまでの時間は,講習により17.0〜66.0秒短縮した。AEDのショックボタンが点滅してからボタンを押すまでの時間は,講習により0.8〜4.8秒短縮した。使用法のガイダンスのアナウンスは機種によりまちまちで,呼吸や脈拍の確認を求める機種もあれば,上半身の衣服を脱がせ絵のとおりパッドを貼れという指示しかしない機種もあった。AEDのパッドを左右逆に貼る参加者が42例中11例にみられた。結論:AEDを一般市民が使用するにはユーザビリティ上の問題点があることがわかった。改善が必要である。
著者
三輪 眞木子 仁科 エミ 黒須 正明 高橋 秀明 柳沼 良知 廣瀬 洋子 秋光 淳生 Makiko Miwa Emi Nishina Masaaki Kurosu Hideaki Takahashi Yoshitomo Yaginuma Yoko Hirose Toshio Akimitsu
出版者
放送大学
雑誌
放送大学研究年報 = Journal of The Open University of Japan (ISSN:09114505)
巻号頁・発行日
no.32, pp.101-111, 2014

本研究は、面接授業「初歩からのパソコン」の受講で習得した放送大学生のデジタル・リテラシー・スキル(以下「DLスキル」)の定着状況把握を目的に実施した。この授業を2010年度2学期から2013年度1学期の間に受講した在学生に2013年11月に郵送アンケートを実施した。調査結果は、DLスキルの種類により、定着したもの、低下したもの、向上したものがあること、DLスキルの定着には、受講生の年齢、受講生のパソコン・インターネットの利用頻度が影響を及ぼしていること、DLスキルの向上とパソコン・インターネット利用頻度の間に相関があること、DLスキルの定着には、受講生のその後の学習方法が影響を及ぼしていることを示した。受講直後から本調査の期間に低下したDLスキルについて、授業後のスキル活用の機会を増加させる必要性が示唆された。また、定着効果のあるテレビ授業「遠隔学習のためのパソコン活用」の受講と同好会等への参加を促す必要性が示唆された。
著者
黒須 正明 KUROSU1 Masaaki
雑誌
放送大学研究年報 = Journal of the Open University of Japan (ISSN:09114505)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.93-109, 2013-03-21

ユーザエクスペリエンスという概念は今世紀、特に2000年代の後半から現在に至って、これまでユーザビリティに関する活動を行ってきた人々だけでなく、マーケティング関係者や営業関係者など、企業活動を例にとればより広範な関係者に利用されるようになってきた。大学等では、この概念は学生満足度として検討の対象になるため、従来のものづくり関係者だけではない広がりを見せている。しかし、概念定義の標準がないため、単なるセールストークになってしまっている側面もある。そうした状況のなか、特に欧州の関係者は概念定義について議論することが多く、その中から感性的側面を重視する見方がでてきた。それに対し、アメリカはどちらかというと、使えるものなら何でも使って売り上げアップを図ろうという傾向で、概念規定は後からやろうとする傾向がある。ともかく、そうした動きのなかで、従来の中心的概念であったユーザビリティは、品質特性の一部として重視されつつも、それに加えて感性的側面を重視する傾向が強くなっている。本論では筆者が主張している意味性を加えた三つの特性からユーザエクスペリエンスを論じるが、その中でも特に感性情報処理に焦点化して感情と認知の関係などにつき、論述を行った。
著者
黒須 正明 山寺 仁 三村 到 炭野 重雄
雑誌
情報処理学会研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.38(1995-GN-011), pp.25-30, 1995-04-20

グループウェアの今後の開発方向を探るため、実会議の分析を行い、どのような形で計算機による支援が行われれば望ましいのかを検討した。本報告では初期的な検討結果として、実会議で遭遇するいくつかの問題点について分析した後、実会議がどのような方向に導かれるべきであるかを考察した。調査対象としたのは企業における意志決定型の会議であり、参加者総数は18名であった。そこに見いだされた問題点には、()会議中発言しない参加者の存在、()議論内容の不規則な変動、()会議としては非本質的な社会的要因の影響、()不明瞭な発言の存在、などがあった。こうした問題点に対して、グループウェアシステムが会議本来の目標、すなわち、()議論を深めること、()論点を明確にすること、()効率を上げること、()妥当な結論を得ること、などを実現するために、どのように対処し、支援を行なうべきかを検討した。併せて、日本の文化特有の行動パターンに深く根ざしているため、システムの導入に対して抵抗が予想される側面などについても考察した。
著者
佐藤 大輔 黒須 正明 高橋 正明 高橋 秀明
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.269-281, 2005-10-15 (Released:2010-03-15)
参考文献数
14

本研究では, 業界の機運として高まりつつあるユーザビリティ担当者の人材育成への関心を踏まえ, ユーザビリティ担当者に求められるコンピタンスの明確化を目指し, 現在のユーザビリティ業界で実際に広く要求されている経験的なコンピタンスを実証的に明らかにすることを目的とした. まず, ユーザビリティ業界のマネージメント層を中心に半構造化インタビューによる2度のデータ収集および分析を実施し, コンピタンスリスト (第1版) を作成した. 続いて, 質問紙調査によって検証と分析を行った. その結果, 大きく五つの分類からなり3段階に重要度分けされる, ユーザビリティ担当者に求められる54項目のコンピタンスリスト (第2版) をまとめた. また, マネージャとエンジニアで求められるコンピタンスに違いがあること, 活動している業種や職種などにかかわらず同一のコンピタンスリストを適用できることが明らかにされた.
著者
黒須 正明
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、ISO9241-210やUX白書等を参考にしたうえで、2011年度には目標達成に関してGOB, POB, SOBという行動パターンを区別した。2012年度には品質特性と感性特性を区別し、さらに意味性を位置づけた。またUXの概念を拡張し、ハードウェアやソフトウェアだけでなく、サービスというヒューマンウェアをも含めることとした。この時点で経験という一般的概念に関して経験工学の概念枠を提唱した。2013年度には、品質特性と感性特性を客観的品質特性と主観的品質特性と言い換え、また意味性についての考察を深め、以前提唱した人工物発達学が意味性を見いだす上で重要であり有用であることを指摘した。
著者
黒須 正明
出版者
放送大学
雑誌
放送大学研究年報 (ISSN:09114505)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.71-83, 2010
被引用文献数
1

機器やシステムの設計における人間中心設計(HCD) の枠組みは、教育におけるインストラクショナルデザイン(ID)の枠組みときわめて類似している。近年、HCDの分野においては、ユーザエクスペリエンス(UX:UserExperience)という概念が注目されており、著者も、購入前の期待感、購入時のインタラクションによる印象形成、購入後の実利用による評価という3 フェーズに分けたモデルを提唱している。特に3 番目のフェーズにおいては満足感が重要な指標とされ、それをどのように測定するかが課題となっている。本稿では、この考え方を学生の学習経験(LX:Learning Experience)と学生満足度(Student Satisfaction)にも援用しようと試みた。ただし、IDにおいては教育場面特有の事情を考慮しなければならない。本稿では学生満足度に関する概念構造とその測定法を、このようなHCD分野との比較において論じた。
著者
黒須 正明 山寺 仁 本宮 志江 三村 到
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.67, pp.43-48, 1995-07-20
被引用文献数
11

臨場感通信において自然な双方向コミュニケーションを実現するためには、画面上の人物サイズをどのように表示すればよいのかを実験的に検討した。画面上の人物サイズを三段階、画面までの観察距離を三段階に変えた実験で、その自然さ等を評定させた結果、視角にして27度の条件が最も良いという傾向が見受けられた。この条件は日常的な対人距離を2m前後とした揚台には等倍提示の条件に相当するものであり、違和感に関する評定が等倍提示で最も低かったことと合わせると、人物サイズを等培で提示することの妥当性が支持されるように考えられた。An experiment was performed to find out an optimal condition of the size of the human body on the screen in the visual communication. There were three size conditions and three observation distance conditions in the experiment. The analysis of the rating data revealed that the condition of 27 degrees of the visual angle was the most natural. Considering that this condition corresponds to the actual size presentation if we assume the distance between two people facing each other to be 2 meters, we think a hypothesis that the human body should be presented in its actual size is supported.
著者
湯浦 克彦 高田 綾子 青島 利久 安村 通晃 黒須 正明 武市 宣之
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.33, pp.475-476, 1986-10-01

自然言語解析、設計自動化、知識処理システム等の基本言語としてLispが注目されている。我々は、Lispの共通言語となりつつあるCommon Lispに準拠したHiLISP(High Performance List Processor)のインタプリタ/コンパイラの基本方式を設計し、HITAC Mシリーズ計算機上に処理系を作成した。HiLISPの設計方針としては、compiled-functionの実行速度を向上させることとインタプリタでの性能も軽視せずに高速性を維持することを取り上げた。Lisp言語では、まず、関数制御の最適化がcompiled-function/インタプリタの高速化の要となる。さらに、Common lispでは、多値の導入、インタプリタでの変数管理規則(スコープとエクステント)の厳密化のほかキーワード・パラメータの追加、引数の型の汎用化など機能が拡張されているので、これらの拡張に伴う性能の劣化を防ぐことが大きな課題となった。本稿では、多値の扱いを含む関数制御およびインタプリタでの変数管理について、HiLISPで適用した特徴的な技法と処理系の性能評価結果を報告する。