著者
壁谷 彰慶 カベヤ アキヨシ Kabeya Akiyoshi
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.13, pp.188-198, 2006-09

Fischer & Ravizza は、著書Responsibility and Controlにおいて、「フランクファート・ケース」と呼ばれる一連の設定を具体的に吟味しながら、行為の責任についての包括的な理論構築を目指している。本書の基本方針は、「別様にすることができた」という様相概念に訴える「統制コントロール」ではなく、現実に行為者が当の出来事に対して適切な因果関係をもちえたかどうかという、「誘導コントロール」に注目するというものである。それは、当の行為を導いた人物の内的構造と、人物から当の出来事に至る外的経路がもつ特徴づけによって説明される。このアプローチの一つの利点は、別様になすことができたがゆえに帰責がなされる場合だけでなく、別様になすことができなかったにもかかわらず帰責がなされる場合をも、一貫した説明図式で対応できる点にある。本稿では、本書の基本主張と帰結責任についての議論を確認し、最後に問題点を指摘する。