著者
Akihiko Nakamura Tadao Asai Kazuhiro Yoshida Kohtaro Baba Kimihiro Nakae
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
Nippon Jibiinkoka Gakkai Kaiho (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.215-224, 2002-03-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
40
被引用文献数
12 10

アレルギー性鼻炎に関する全国疫学調査を行った. 全国の耳鼻咽喉科医師9471名およびその家族を対象とし, 1998年6月にアレルギー性鼻炎に関する質問用紙を郵送し, 同年9月末日までに回収した. 回収率は42.8%で, 17301名が対象になった. 年齢構成を日本人人口ものと比較すると調査対象者は20歳代がやや多く, 60歳以上特に男性に多い以外ほとんど差異はみられなかった.スギ花粉症の有症率は, 人口分布調整を行ったところ17.3%であった. 全体に日本海側, 瀬戸内地方に比べ太平洋側, 中部地方に高く, 高緯度あるいは低緯度地域で有症率は低かった. 年齢層別有症率をみると, 10歳代で急激に増加し60歳代になると低下した. スギ花粉飛散が多い地域で有症率が高く, 住環境に関しては郊外, 住宅地, 都会の順で高かった.スギ以外の花粉症についても同様に検討した. 年齢層別有症率および住環境と有症率との関係は, スギ花粉症とほぼ同様の結果で, 人口分布調整後の有症率は11.7%であった.通年性アレルギー性鼻炎の人口分布調整後の有症率は19.8%で, スギ花粉症に比べやや高率であった. 年齢層別有症率は, 5~9歳で急激な上昇がみられ, スギ花粉より若年者での発症が多く, 60歳以降での有症率の低下はみられなかった. スギ花粉症と異なり, 地域や住環境による有症率の差異はみられなかった.今回の調査は全国に住居する耳鼻咽喉科医師およびその家族を対象としており, スギ花粉症はもとより通年性アレルギー性鼻炎の地域による有症率の差異を知ることができた. また回収率も他のアンケート調査より優れており, 回答内容の信用度も高いため, 日本全国のスギを主としたアレルギー性鼻炎に関する疫学的調査として有用なものと思われた.